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服務規律違反の従業員にはどう対処すればよい? 弁護士が解説

2024年03月28日
  • 労働問題
  • 服務規律違反
服務規律違反の従業員にはどう対処すればよい? 弁護士が解説

令和4年度(2022年度)に福岡県内の総合労働相談コーナーに寄せられた労働に関する相談は4万6384件でした。

企業の服務規律に違反する従業員に対しては、まず改善指導を行い、改善が見られなければ懲戒処分を検討することになります。ただし、いきなり重い懲戒処分を行うと無効になるおそれがあるので、軽い懲戒処分から段階的に行うべきです。

本コラムでは、服務規律違反を犯す従業員への対処法などについて、ベリーベスト法律事務所 北九州オフィスの弁護士が解説します。

1、服務規律とは

「服務規律」とは、従業員が労働するにあたって遵守すべきルールです。
企業においては、職場における秩序を維持するために、就業規則の一部として服務規律が定められます。

  1. (1)服務規律を定める目的

    服務規律を定める目的は「職場における秩序を維持すること」です

    おのおのの従業員が勝手なことをしては、企業として実現すべき事業目的の達成が遠のいてしまいます。
    効率よく事業目的を達成するためには、従業員を統率しなければなりません。
    統率の厳しさの程度は企業によってさまざまですが、企業の方針に沿った服務規律を定めて、事業目的の達成に向けて従業員をまい進させることが大切です。

  2. (2)服務規律は就業規則の一部

    服務規律は原則として、事業場におけるすべての従業員に適用されるため、就業規則の記載事項にあたります(労働基準法第89条第10号)。
    したがって、常時10人以上の労働者を使用する事業場では、服務規律を就業規則に定めなければなりません

    また、就業規則の作成義務がない事業場においても、服務規律を就業規則で定めることがあります。
    具体的には、就業規則の中に服務規律に関する章や条文を設けて、従業員が勤務中に遵守すべきルールを定めることになります。

2、服務規律違反を犯す従業員への対処法

服務規律に違反した従業員に対しては、まずは改善指導を行うことになります。

改善が見られなければ懲戒処分を行うことも検討すべきですが、いきなり懲戒解雇などの重い処分は行わず、軽い懲戒処分から段階的に行うことが大切です

  1. (1)改善指導を行う

    まずは服務規律違反の内容を確認したうえで、従業員本人に対してその旨を指摘し、改善指導を行いましょう。

    具体的には、以下のような対応が求められます。

    • 従業員のどのような行為が服務規律に違反しているのかについて、本人と話し合いながら認識を共有する
    • 服務規律違反の行動を改善するための具体策を、本人と話し合いながら考えて実践させる
    • 服務規律違反の改善状況をチェックし、従業員本人にも報告させる
    • 改善に不足がある場合は、必要に応じて追加の改善指導を行う


    適切に改善指導を行えば、従業員の服務規律違反が解消し、働きぶりが向上することも期待できます。
    従業員の性格や意見もふまえながら、効果的な改善指導の方法を模索しましょう

  2. (2)懲戒処分を行う|段階的に重くする

    改善指導をしても服務規律違反をやめない従業員に対しては、懲戒処分を検討することになります。

    懲戒処分には、主に以下の種類があります。
    戒告・けん責がもっとも軽く、懲戒解雇がもっとも重い懲戒処分です。

    ① 戒告・けん責
    従業員に対して厳重注意を与える懲戒処分です。始末書などを提出させる場合もあります。

    ② 減給
    従業員の給与を減額する懲戒処分です。1回あたりの減給額には上限が定められています(労働基準法第91条)。

    ③ 出勤停止
    従業員の出勤を禁止し、その間の賃金を支給しない懲戒処分です。

    ④ 降格
    従業員の役職を降格させ、役職手当を恒久的に不支給または減額とする懲戒処分です。

    ⑤ 諭旨解雇(諭旨退職)
    従業員に対して退職を勧告する懲戒処分です。
    従業員が論旨解雇による退職を拒否した場合は、懲戒解雇が行われることが一般的です。

    ⑥ 懲戒解雇
    従業員を強制的に退職させる懲戒処分です。


    懲戒処分を行うにあたっては、懲戒権の濫用にあたらないように注意する必要があります。使用者が労働者を懲戒することができる場合に、従業員の行為の性質や態様などに照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない懲戒処分は、懲戒権の濫用として無効となってしまうためです(労働契約法第15条)。

    服務規律違反については、きわめて悪質なものを除いて、まずは戒告・けん責などの軽い懲戒処分から行うのが無難といえます
    その後、改善指導が奏功しない場合には、減給以上の懲戒処分を段階的に行っていきましょう。

  3. (3)いきなり解雇するのはNG|解雇の判断は慎重に

    服務規律違反を理由に従業員をいきなり解雇した場合には、解雇権濫用の法理(労働契約法第16条)によって解雇が無効となる可能性は非常に高いといえます。
    解雇が無効になると、従業員を復職させる必要が生じるほか、職場を離れていた期間の賃金全額を支払わなければなりません。
    労働審判や訴訟などの対応にも多大なコストがかかってしまうため、解雇の無効は、企業としては避けるべき事態です。

    解雇権濫用の法理はきわめて厳格に運用されているため、不当解雇を主張された場合は、企業側は不利な立場に置かれる可能性は高いといえます。
    従業員を安易に解雇することは避けて、改善指導や軽めの懲戒処分からはじめて、慎重に対応していくことが大切です

3、服務規律違反に関する裁判例

以下では、服務規律違反が問題になった裁判例を二つ紹介します。
実際に従業員に対して懲戒処分を行う際には、これらの裁判例で示された基準等を参考にしてください。

  1. (1)神戸地裁令和元年11月27日判決

    従業員が会社のPCを用いて、勤務時間中に証券会社のサイトなどを頻繁に閲覧したことを理由に、会社が従業員を降格処分とした事案です。

    裁判所は、従業員が5か月半のうち合計86日間にわたり、1日あたり15分から17分程度、ウェブサイトの私的閲覧を行ったことを認定し、職務専念からの逸脱の程度は小さくないとしました。

    その一方で、裁判所は、以下の事情についても指摘および認定を行いました。

    • 私的閲覧による業務への支障が大きいとまではいえないこと
    • 私的閲覧行為が会社に与える影響もそれほど大きいわけではないこと
    • 私的閲覧行為によって、サーバーセキュリティ上の危険が生じたわけではないこと
    • 降格処分以前に従業員が懲戒処分を受けたことや、勤務成績が不良であったことはうかがえないこと
    • 会社の従業員に対する個別の注意や指導等はなかったこと
    • 降格処分よりも軽い減給処分について、会社内で十分な検討がされたとはうかがえないこと


    上記の各事情をふまえて、裁判所は、「降格処分がいささか重きに失するものであり、社会通念上の相当性を欠く」ため無効であると判示したのです。

  2. (2)東京地裁令和4年2月25日判決

    従業員の多数にわたる問題行動を理由に、会社が従業員を懲戒解雇処分とした事案です。

    裁判所は、従業員による問題行動を68個も認定しました。
    そして、従業員のコミュニケーション能力・日本語能力・文章作成能力が欠如または不足していることを指摘したうえで、会社による正当な改善指導を従業員が無視し続けたことを論難し、懲戒事由に該当するとしました。

    懲戒解雇の相当性についても、以下の事情を認定したうえで「社会通念上相当性がある」と判示し、結論として懲戒解雇は有効とされたのです。

    • 従業員が長期間にわたって業務指示や服務規律に違反する行為をし続けており、指示違反および規律違反の程度は著しいこと
    • 会社は、従業員が問題行動を起こすたびに注意し、問題点を指摘して指導したうえで、懲戒処分についても軽いものから段階的に行い、従業員に改善の機会を与え続けたこと
    • 従業員は不合理な主張を繰り返し、会社の改善指導を受け入れる姿勢を見せなかったこと
    • 他の従業員から会社に対して、従業員の問題行動に関する嘆願書が提出されており、他の部署に異動させるなどの対応も困難となっており、解雇以外に採り得る手段はなかったこと

4、企業の問題については弁護士に相談を

従業員の服務規律違反への対応を含めて、企業において問題やトラブルが発生した際には、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士は、法令や契約の規定をふまえて、企業が負うリスクや損害を最小限に抑えられるように、適切な対応のあり方についてアドバイスすることができます
示談交渉や法的手続きなどへの対応が必要な場合は、弁護士がその対応を全面的にサポートや代行をすることも可能です。

5、まとめ

服務規律違反を犯している従業員に対しては、粘り強く改善指導を行うことが大切です。改善指導が奏功しない場合は懲戒処分を行うことも検討できますが、いきなり懲戒解雇などの重い処分を行うことは避けて、軽い懲戒処分から段階的に行うことが大切です。
ベリーベスト法律事務所では、労働問題に関する企業のご相談を随時受け付けております。従業員とのトラブルについても、企業のリスクや損害を最小限に抑えられるように、弁護士が慎重に検討したうえで対応いたします。

企業の経営者や担当者で、従業員の服務規律違反を発見して、どのように対応するのがよいか悩まれている方は、まずはベリーベスト法律事務所までお気軽にご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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