辞めたくても退職させてくれない会社。違法の可能性を弁護士が解説!

2021年04月15日
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辞めたくても退職させてくれない会社。違法の可能性を弁護士が解説!

北九州市にもある福岡県が運営する労働者支援事務所では、労働問題に関する相談を受け付けています。令和元年度には、前年度に比べて12.6%も相談が増加し、1万611件もの相談が寄せられたと発表されています。(令和2年7月発表)

退職したいのに退職させてもらえないいわゆるブラック企業にお勤めの方の悲鳴もきかれ、退職代行業まで登場しています。会社を辞めたいのに退職させてくれないという状況は、労働者を苦しめている大きな問題のひとつでしょう。では、退職させてくれないときにどうしたらいいかを、ベリーベスト法律事務所 北九州オフィスの弁護士が解説します。


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1、「退職させてくれない」は違法! 退職は労働者の自由!

「退職させてくれない」は違法! 退職は労働者の自由!

会社を辞めたいと申し出たにもかかわらず、会社が退職させてくれないというケースで悩んでいる方は少なくありません。では、本当に会社を辞めることは違法なのでしょうか。

  1. (1)退職させてくれないことがおかしな理由

    実は法律上、労働者(期間を定めない労働契約)から申し出る「辞職」は、原則として2週間前に申し出れば、それだけで大丈夫です。法律上において、使用者の承諾が必要という規定もありません。

    このように、会社が退職させてくれないことを「在職強要」と呼んでいます。退職届を出したにもかかわらず、会社がこれを受理せず、「一方的に辞めることは許されない」などと退職させてくれなくても、その言葉に従う必要は一切ありません。具体的な退職理由を申告する必要もなく、退職理由は「一身上の都合」で十分でしょう。

  2. (2)退職させてくれない場合に確かめたい就業規則

    ただし、退職したいという要望を告げる際は、雇用されたときに交わした雇用契約書や就業規則をあらかじめ確認しておいたほうがよいでしょう。

    たとえば、雇用期間が契約で決まっているときは、やむを得ない事情がない限り、雇用契約期間中途で解約するためには、労使双方の合意が必要です。また、退職方法の手続きが定められているときは、それに沿ったほうがよいでしょう。会社側とトラブルになると退職の手続きが円滑に進まない可能性もあります。まずは冷静に就業規則を確かめてみてください。

    しかし、就業規則の内容があまりに悪質なケースもあります。そのようなケースでは、就業規則で求めている内容自体が違法になる可能性があるかもしれません。適法かどうかかがわからないときは、弁護士、もしくは労働基準監督署に相談してみてください。就業規則に書いてあるからと、ひとりで我慢して泣き寝入りすることはありません。

  3. (3)どのように退職させないのか?

    退職させてくれない、在職強要を行う会社は、さまざまな理由や手段で引き止めようとします。具体的には、以下のケースが多いようです。

    • 退職届を出しても受理してもらえない
    • 「人を探すまで待ってほしい」と言われ続けている
    • 「辞めたら損害賠償請求する」、「懲戒解雇処分にする」と脅されている
    • 会社に損害を与えるので、辞める月の給与は払わないと言われた

    これらのケースは、法律に則した対応ではありません。2週間前に辞めることを明確に伝えていれば、気兼ねなく辞めてしまって問題ないと考えられます。しかし、できれば円満に退職したいと考えることは当然のことです。どうすればよいのでしょうか。

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2、「退職させてくれない」に潜む違法行為と対処法は?

「退職させてくれない」に潜む違法行為と対処法は?

前述のとおり、退職の旨を伝えても、退職させてもらえない事例は少なくありません。強硬な態度に出られると、ずるずると退職できずに身体を壊すこともあるでしょう。そうなる前に手を打ちたいところです。

  1. (1)退職届を受け取ってくれないときの対処法

    退職届をせっかく書いても、受け取ってもらえないことがあります。そのときは、内容証明郵便に配達証明をつけて送付するようにしてください。

    内容証明郵便は、誰が誰に対してどのような内容の手紙をいつ送ったかの記録が残り、配達証明はいつ届いたかが郵便局に記録される郵便サービスです。通常の送料に加えて手数料がかかりますが、確実に相手が受け取った日にちを公的に証明できます。

    退職届を内容証明郵便で出すときは、表題は「退職願」ではなく「退職届」で出してください。そして「何月何日に退職したいと思います」ではなく、「何月何日をもって退職します」という書き方をした方が会社側につけこまれる心配が減るでしょう。内容証明郵便がいつ届くかわからないときは「この書面が届いてから2週間が経過した日をもって退職します」など、明確な意思を明示することをおすすめします。

  2. (2)辞めるなら解雇処分にするという脅し

    ただ、辞めたいと言っただけで「懲戒解雇される」と脅されれば、辞めるに辞められない状態に陥ることでしょう。

    懲戒解雇処分は、犯罪行為や経歴詐称などをした方が受ける処分です。懲戒解雇処分になると、離職票に「重責解雇」と書かれて経歴に大きな傷がつくうえ、ほとんどの場合、退職金ももらえません。しかし、本来、この処分は従業員が就業規則に明記されている違反行為をしない限りはしてはいけない重大な処分です。虚偽の理由や些細な就業規則違反では、会社側は懲戒解雇することはできません。

    したがって、「辞めるなら懲戒解雇処分にする」と言われても、あなたが違反行為をしていないのであれば取り合う必要はないでしょう。万が一、不当な懲戒解雇処分をされた場合は、できるだけ早く撤回させなければなりません。一刻も早く、労働基準監督署や弁護士に相談してください。

  3. (3)辞めるなら違約金と書かれた就業規則は正当か?

    会社の就業規則に「4ヶ月以内に退職する場合は8万円を支払う」など、違約金についての記載があっても、これを支払う必要はありません。

    労働基準法第16条では「賠償予定の禁止」として「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」と定めています。

    したがって、もし「辞める際は罰金を支払う」などの就業規則があったとしても、その内容自体が違法です。もちろん給料からの天引きも違法となります。

    違約金を求められた場合は毅然(きぜん)とした態度で拒否し、万が一天引きされてしまった場合は労働基準監督署や弁護士に相談してください。

  4. (4)辞めたら損害賠償請求すると言われたら?

    退職したいと伝えたら「損害賠償請求する」と言われ、退職させてくれない状態に陥っている人もいるでしょう。

    確かにプロジェクトリーダーになったのに、いきなり退職して取引先との契約が破談になったなどの会社に明らかな損害を与えた場合は、本当に損害賠償を起こされる可能性は否定できせん。しかし、基本的には退職する際に損害賠償責任を負うことはほぼないと言ってよいでしょう。

    しかし、損害賠償請求とは別に、研修費用等を返すように言われた場合は、返金しなければならない可能性もあります。特に問題となるのは以下のような場合です。

    • 会社が費用を負担する研修を自分の希望で受けた場合
    • 会社が研修費用を立て替え、一定期間勤めればその費用の支払いが免除される場合

    しかし、返金の必要があるか否かを個人が判断することは非常に難しいでしょう。そのようなときは、詳細を弁護士に相談してみることをおすすめします。

3、退職させてくれないときの相談先

退職させてくれないときの相談先

退職させてくれないときの相談先としては、会社の労働組合も候補に入ってくるでしょう。しかし、どうしても社内関係が信じられないこともあると思います。

以下に、社外の公的機関などをはじめとした相談窓口を紹介します。参考にしてください。

  1. (1)労働基準監督署(地域)

    まず思いつくのは勤務先を直接監督する労働基準監督署でしょう。総合労働相談コーナーなどで、労働条件、解雇、賃金引き下げ、いじめ、嫌がらせなどに関する相談を受け付けています。労働基準監督署は企業に対し問題行為の是正指導を行う権限を有しているため、会社を辞めさせてもらえない状況を客観的に裏付ける証拠を提出すれば、行政指導を行うなどの対応を行ってくれることがあります。ただし、労基署の行政指導に強制力はありません。事態が改善しないときは、できるだけ早めに弁護士に相談することをおすすめします。

  2. (2)労働局(都道府県)

    労働基準監督署の対応が難しければ、その上部機関である都道府県の労働局へ相談してください。客観的な情報を基に労働基準監督署が適切に対処してくれないことを訴えれば、話を聞いてくれると思います。状況によっては、無料で和解のあっせんが行われるでしょう。しかし、労基署同様、強制力はありません。労基署の指導を無視する会社であれば、ほかの手段を模索する必要があるでしょう。

  3. (3)所轄官庁・地方自治体(補助金関係)

    また、国や地方公共団体から何らかの補助金を受けている企業の場合は、その前提として法令遵守を誓約させられている可能性があります。雇用関係の助成金を受けている企業の場合、明らかに労働法令に違反する状態を解消しなければ、補助金の支給停止原因になる恐れがあることが判明すれば、あなたへの対応が変わるかもしれません。

  4. (4)警察署

    会社側の強引な引き止め行為の中に、傷害(刑法第204条)、暴行(同第208条)、逮捕監禁(同220条)、脅迫(同第222条)、強要(同第223条)などの罪を問えるようなケースもあるかもしれません。その際は、証拠をそろえて警察に相談する手もあります。ただし、原則的に警察は民事不介入なので、確実な証拠がなければ取り合ってくれない可能性もあります。

4、退職させてくれないときに弁護士を雇うメリット

退職させてくれないときに弁護士を雇うメリット

前編からここまでで、退職させてくれないときにできる対処法を解説しました。強引に辞めたいと思っていても、顔を合わせてしまうと言いくるめられてしまう恐れもあるでしょう。損害賠償をさせられると思い込んでしまったり、自宅へ押しかけてくるかもしれないなどの心配もあるかもしれません。そのほか、訴えると言われた場合には、我慢しなければならないような気がしてしまう可能性もあるでしょう。

そのようなときは、労働問題の解決実績が豊富な弁護士に相談してください。具体的に以下のような対応が可能です。

  • 円満に退職できるよう依頼する
  • 必要な書類を早急に出してもらうよう促す
  • 未払いの残業代があるかどうか確認し、必要に応じて請求する
  • 法律に基づき、有利な条件で問題を解決できるよう粘り強い交渉を行う

依頼した弁護士であれば、直接会社側と交渉し、相手の違法性もきちんと指摘します。もちろんあなたが同席することが難しければ、代理人として交渉可能です。弁護士に依頼したほうが、最終的には問題をのちのちに残すことなく退職できる可能性が高まるでしょう。

5、まとめ

「会社を辞める」と伝えても、次に人が入るまでなどと引き伸ばされるケースは少なくないでしょう。次の職場がすでに決まっていれば焦りもあるでしょうし、体調不良による退職であれば、辞めたいと強く思うほどストレスがたまっている状態に陥っていると推察できます。

ストレスの根源となっている会社や上司などと交渉しなければならないことを考えると、気分が滅入ってしまう方は少なくないはずです。そのようなときは、ぜひベリーベスト法律事務所 北九州オフィスの弁護士にご相談ください。心理的負担を最小限にしながら、最短の道のりでの労働問題解決を目指し、力を尽くします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています