解雇制限とは? 除外される条件や解雇の手続きと流れを解説

2024年11月27日
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解雇制限とは? 除外される条件や解雇の手続きと流れを解説

解雇制限とは、育休や労災休業などの一定の状況にある労働者に対して、使用者(会社)が解雇することを法律によって制限することです。

解雇制限に違反すると罰金などのペナルティーが課されますが、一方で解雇制限の対象外となるケースもあり、その範囲について詳細を知りたいという方も少なくないでしょう。

そこで、今回は、解雇制限について、企業が知っておくべき適用条件や例外、関連する制度、また具体的な解雇の手続きについて、ベリーベスト法律事務所 北九州オフィスの弁護士がご説明いたします。

1、解雇制限とは|適用される条件

まずは、解雇制限の概要と解雇制限の対象となる労働者の条件について解説します。

  1. (1)解雇制限とは

    解雇制限は、労働基準法第19条第1項に定められています。

    使用者は、以下の状態である労働者を解雇することができません。

    • 労働者が業務上の負傷・疾病の療養のため休業する期間およびその後30日間
    • 産前産後休業期間(労働基準法第65条)およびその後30日間
    ※それぞれの詳細は次項で後述


    ただし、打切補償(労働基準法第81条)あるいは労災保険の傷病補償年金の支払いがなされた場合、あるいは天災事変によって事業の継続が不可能になった場合には、例外的に制限期間内の解雇が可能になります(労働基準法19条1項ただし書き)。

    解雇制限(労働基準法第19条第1項本文)に違反して労働者を解雇した場合、その解雇は無効と判断されます

  2. (2)労災休業の場合の解雇制限

    前述の通り、労働者が業務上、負傷をしたり、病気などで休業をしたりしている場合、解雇制限が適用されます。この休業期間と復帰後の30日間は解雇ができません。

    この場合、「休業」が必要であることに注意が必要です。業務上の負傷であっても、休業せずに働いていたり、通院にとどまっていた場合には解雇制限が適用されません

    さらに、通勤災害は適用対象になりませんので、この点にも注意が必要です。

  3. (3)妊娠期間中や育休期間終了後の場合の解雇制限

    妊娠期間中や育休期間明けの場合にも、解雇制限の対象になります。

    妊娠中の女性は、産前には6週間(多胎妊娠の場合は14週間)、産後には8週間の休業が労働基準法第65条によって認められています。解雇制限を定める労働基準法第19条第1項では、この休業期間中とその後の30日間について解雇が制限されています。

2、解雇制限が除外される条件

労災休業や妊娠期間中、育休期間終了後の一定期間でも、例外的に解雇制限の適用がなくなり、有効に解雇できる場合があります。

それは、以下のいずれかの場合です。

① 打切補償の支払いがなされた場合(労働基準法第81条)
打切補償は、労働基準法第81条に定められています。打切補償とは、業務上のけがや病気によって休業して治療をしている労働者が、その治療を開始して3年を経過しても治療が終わらないとき、会社はその労働者の平均賃金の1200日分を支払うことで、その労働者に対する補償を終了できる制度です。打切補償がされることで、例外的に解雇制限の労働者を解雇することができます。
また、治療が開始されて3年以上経過した時点で、労働者が労災保険の傷病補償年金の支払いを受けている場合にも、打切補償と同視されますので、解雇制限の例外として解雇できます。

② 天災事変によって事業の継続が不可能になった場合(労働基準法19条1項ただし書き)
会社側の責任ではなく、地震や津波または戦争などによって、生産のための工場などが損壊し、事業を行っていくことが不可能となるケースです。
この場合、労働基準監督署長の認定が必要となります。

3、解雇が禁止される場合とは

解雇制限は、労働基準法第19条第1項を根拠とするものですが、その他にも各法令によって解雇を禁止または無効としているものがあります。

以下、主なケースをご紹介します。

① 労働者派遣法違反の事実の申告(労働者派遣法第49条の3第2項)
派遣労働者は、労働者派遣法に違反する事実がある場合、厚生労働大臣に申告することが可能です。このような申告をなされた場合、派遣元および派遣先の会社は、申告をした派遣労働者に対し解雇やその他の不利益な扱いをしてはなりません。

② 公益通報(公益通報者保護法第3条)
労働者が公益通報をしたことを理由に、会社(派遣元の会社)が行った解雇は、無効とされています。

③ 正当な労働組合行為など(労働組合法第7条1号)
労働者が労働組合の組合員であることや、労働組合に加入したこと、労働組合を結成しようとしたこと、もしくは労働組合の正当な行為をしたことを理由にして解雇することは禁止されています。

4、解雇の手続き

ここでは、実際に解雇する場合の手続きに必要な解雇予告と解雇理由証明書について説明します。

  1. (1)解雇予告

    解雇には
    ① 普通解雇
    ② 懲戒解雇
    ③ 整理解雇
    といった解雇の類型があります。

    ① 普通解雇
    普通解雇とは、労働契約を継続できない事由に基づき、使用者が行う解雇をいいます。普通解雇によって、労働者を解雇するためには労働契約法第16条(解雇権濫用法理)に基づき、「客観的に合理的な理由が存在すること」および「社会通念上相当と認められること」の2つの要件を満たす必要があります。
    客観的に合理的な理由とは、就業規則等に定められた解雇事由に基づいた、能力不足・勤務態度・規律違反等の判断です。社会通念上相当であるかどうかは、あらゆる事情を総合考慮して判断されます。

    ② 懲戒解雇
    懲戒解雇とは、従業員が企業秩序違反を犯した場合にこれに対する制裁として行う懲戒処分のうち、最も重いものをいいます。
    懲戒解雇が有効となるか否かは、以下のような事情に基づいて判断されます。
    • 懲戒事由および懲戒の種類が就業規則に明示的に規定されているかどうか
    • 規定に該当する懲戒事由が存在することを前提とし、その違反の程度
    • 懲戒解雇に際して弁明の機会の付与等の適正手続が実施されているかどうか
    • 懲戒解雇という処分を行ったことにに合理的理由があり,懲戒解雇の態様が社会的に相当であるかどうか

    ③ 整理解雇
    整理解雇とは、会社の経営上の都合に基づいて行う解雇です。整理解雇も解雇であるため、解雇権濫用法理の適用がありますが、従業員側に責任のない解雇であるために、厳格で具体的な独自の判断枠組みとして整理解雇の法理があります。
    整理解雇の法理において、整理解雇の有効性を判断するときに考慮される要素は
    ① 人員削減の必要性
    ② 解雇回避努力
    ③ 人選の合理性
    ④ 手続きの相当性
    の4要素です。


    これら3つのいずれの解雇であっても、原則として解雇予告が必要になります。ただし、労働者が悪質な法令違反行為をしたなど労働者の責めに帰すべき事由がある場合などには不要となることもあります。

    民法上、実際に解雇をする2週間前に予告をすることが必要ですが、労働基準法によって、この2週間の予告を30日に延長しています。

    会社は、労働者を解雇するにあたっては、原則として30日前に予告するか、あるいは30日分以上の平均賃金(予告手当)を支払わなくてはなりません。解雇予告は、法的には口頭で伝えても有効ではありますが、証拠になる形で書面でも解雇を通知したほうがよいでしょう

  2. (2)解雇理由証明書

    解雇理由証明書とは、会社から解雇した労働者に対して交付する書面です。解雇した元社員から求められた場合には、解雇通知書を渡していたとしても、別途交付しなければなりません。解雇理由証明書には、解雇を判断するに至った具体的な事実関係等を記載する必要があります。

5、まとめ

解雇制限とは、労働災害による休業期間などといった特定の条件に当てはまる労働者の解雇が制限される期間のことです。ただし、解雇制限が除外される条件もあるため、会社は解雇制限の詳細を確認することが重要です。

そして、解雇制限が適用されるかどうか、例外に当てはまらないのか、など解雇制限については裁判例も多く、トラブルが多く存在しますこのような労働トラブルの解決には弁護士による適切なサポートが重要になります

ベリーベスト法律事務所 北九州オフィスでは労働トラブルに豊富な経験がありますので、お困りのことがあれば、ベリーベスト法律事務所 北九州オフィスにご相談ください。

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