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交通事故の損害賠償請求における逸失利益とは? 基礎知識を解説します

2020年10月30日
  • 慰謝料・損害賠償
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  • 北九州
交通事故の損害賠償請求における逸失利益とは? 基礎知識を解説します

福岡県警の統計によりますと、福岡県の北九州地区のみにおいて、令和元年12月末時点で年間7115件もの交通事故が発生しています。また、交通事故による負傷者が9524人、死亡者が30人も発生しているので、北九州地区において、多くの方が交通事故による損害を受けていることが分かります。

交通事故による損害は、事故の状況や個々の事案によって異なります。しかし、損害論についてある程度の共通した考え方があります。そうでなければ、損害額の確定が困難になる場合もありますし、同じような事案であるのに損害額に不公平が生じることもあるからですす。
交通事故で被った損害を加害者に請求する際には、人的損害と物的損害に分け、さらに治療費等の細目に分けて請求します。
そして、人的損害の費目の中でも、いわゆる「逸失利益」については、争いが生じやすいといえます。

本コラムでは、
・「逸失利益」の考え方や計算方法
・加害者に逸失利益を請求する方法
・逸失利益を請求できない事案
・逸失利益を請求することつき弁護士に相談するメリット
などについて、ベリーベスト法律事務所 北九州オフィスの弁護士が解説します。

1、逸失利益とは?

交通事故における「逸失利益」(いっしつりえき)とは、交通事故の被害が受けなければ得られたはずの利益のことです。

たとえば、交通事故による後遺障害(後遺症)のため労働能力が減少してしまい、事故前よりも収入が減少してしまうことがあります。この収入の減少については、交通事故によって受けた損害だと考えます。交通事故が原因で死亡し、本来であれば収入が得られるはずだった収入が得られなくなった場合も同様です。

逸失利益が発生している場合、被害者は、加害者に対し、不法行為に基づく損害賠償請求をすることで(民法709条)、その損害の支払いを求めることができます。

2、逸失利益の計算方法

逸失利益の計算方法は、被害者に後遺障害(後遺症)が残存した場合と、被害者が死亡した場合とで少しだけ異なるので、分けて説明します。

  1. (1)被害者に後遺症が残存した場合

    被害者に後遺症が残存した場合について、逸失利益の計算式は以下の通りです。

    逸失利益 = ①基礎収入額 ×②労働能力喪失率 × ③労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数


    ①基礎収入額
    基礎収入額について、給与所得者の場合は、原則として、事故前年の収入を基礎にして算出します。
    事業取得者の場合(自営業者、自由業者、農林水産業等)な、申告所得を参考にしますが、同申告額と実収入額が異なる場合には、実収入額が申告額を上回るという立証があれば、実収入額を基礎にして算出します。
    家事従事者の場合、賃金センサスの産業計・企業規模計・学歴計・女性労働者の全年齢平均の賃金額を基礎にして算出します(最判昭49.7.9・判時748・23)。
    学生・生徒・幼児等の場合、原則として、賃金センサスの産業計・企業規模計・学歴計・男女別全年齢平均の賃金額を基礎にして算出します。

    上記の場合のほか、事故前に就職が決まっていたが交通事故による後遺障害により働けなくなったなどの場合や、不明点がある場合には、専門的な判断が必要ですので、弁護士に相談してみた方がいいでしょう。

    ②労働能力喪失率
    労働能力喪失率については、労働省労働基準局長通牒(昭32.7.2基発第551号)別表労働能力喪失率を参考とし、被害者の職業、年齢、性別、後遺症の部位・程度、事故前後の稼働状況等を総合的に判断して、事案ごとに評価します。
    もっとも、後遺障害(後遺症)による労働能力喪失率は、基本的には、後遺障害等級ごとに決められます。つまり、逸失利益を請求するためには、あらかじめ後遺障害等級の認定を受ける必要があります。

    後遺障害の等級は自動車損害賠償保障法施行令別表に定められているもので、後遺障害の状態や程度によって14段階に分かれています。

    等級認定の手続は、相手方保険会社に診断書などの必要書類を渡して認定手続をしてもらう「事前認定」と、被害者自身で自賠責保険会社に対し必要書類を提出して行う「被害者請求」があります。

    さらに、認定された等級に対し不服があれば、「異議申立」をすることもできます。
    いずれにせよ、被害者が受けた後遺症がどの等級に該当するのか認定された段階で、逸失利益の計算が可能になるのが原則です。

    たとえば、頸椎捻挫等のむち打ち症によって神経症状等の後遺症が残存した場合には、後遺障害等級は、基本的に、12級または14級が認定されます。
    労働能力喪失率については、後遺障害等級12級の場合では14%、14級の場合では5%とされています。

    ③労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
    労働喪失期間について、始期は症状固定日(それ以上治療を続けても症状が改善する見込みがない状態に至った日)、終期は原則として67歳とされています。
    労働喪失期間の終期は、職種、地位、健康状態、能力等により、上記の原則とは異なった判断がされることもあります。
    なお、頸椎捻挫等のむち打ち症の場合は、12級で10年程度、14級で5年程度に労働能力喪失期間を制限する例が多く見られるので、注意が必要です。

    ライプニッツ係数とは、将来の就労可能年数に応じて中間利息の控除を算定するために定められている係数のことです。
    逸出利益の算定においては、将来得られるはずの利益を前倒しで賠償することになるので、将来に渡って発生するはずの利息分を控除する必要があり、ライプニッツ係数はそのために用いられます。

    なお、中間利息は、これまでは年5%の割合で控除するとされていましたが、民法改正により、令和2年4月1日以降(当初3年間)に発生する交通事故の損害賠償請求について、中間利息控除に用いる利率は年3%となりました(改正民法722条の2・同417条の3、同404条2項・同条3項)。

    参考:国土交通省|就労可能年数とライプニッツ係数表(PDF:154KB)

    ④具体例
    たとえば、令和2年4月1日以降に発生した交通事件について、症状固定時の年齢が50歳で、年収が500万円の男性サラリーマンが傷害を負い、骨折や脱臼(器質的損傷)のない頸椎捻挫(いわゆるむち打ち症)により後遺障害等級14級9号の認定を受け、労働能力喪失率が5%、労働能力喪失期間が5年に制限された場合には、逸失利益の算定は以下のようになります。

    500万円〔基礎収入額〕×0.05〔労働能力喪失率〕×4.5797〔労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数〕
    =114万4925円
  2. (2)被害者が死亡した場合

    被害者が死亡した場合について、逸失利益の計算式は以下の通りです。

    逸失利益 = ①基礎収入額×②(1-生活控除率)×③就労可能年に対応するライプニッツ係数


    ①基礎収入額
    上記(1)①と同じように考えます。

    ②生活控除率
    被害者が死亡した場合、収入を得る機会が失われるのと同時に生活費を支出することもなくなるため、基礎収入額から支出されたであろう生活費を控除する必要があります。もっとも、実務上、実際に支出を免れた生活費の金額を個々に設定することは困難なので、収入の30~50%をもって当該生活費として控除することにしています。

    ③就労可能年に対応するライプニッツ係数
    就労可能年数は、原則として、死亡時から67歳までとされています(最判昭40.6.8裁判集民79号363号など)。
    ライプニッツ係数は、上記(1)で説明した通り、将来の就労可能年数に応じて中間利息の控除を算定するために定められている係数のことです。

    ④具体例
    たとえば、令和2年4月1日以降に発生した交通事件について、年齢が30歳で、年収が500万円の男性サラリーマン(被扶養者1人)が死亡した場合には、逸失利益の算定は以下のようになります。

    500万円(基礎収入額)×(1-0.4)〔生活控除率〕×22.1672〔67歳までのライプニッツ係数〕
    =6650万1600円

3、逸失利益を請求できない事案

交通事故で受けた被害が原因で後遺障害(後遺症)が認定された場合であっても、逸失利益が発生したとは認められない事案もあります。

たとえば、交通事故によって外貌醜状が残存した事案を考えてみます。
外貌醜状とは、頭部、顔面部、頸部のように、上肢及び下肢以外の日常露出する部位に醜状痕が残った後遺傷害です。醜状の程度に応じて、7級12号、9級16号、12級14号が認定されることになります。
外貌醜状は、デスクワークや荷物の搬送等の通常の労働にとっては特に影響はないので、そういった職に就いている方の場合、労働能力喪失が認められず、逸失利益は発生しないとも考えられます。
一方で、被害者が芸能人、モデル、ホステス、アナウンサー、営業マン、ウェイター等の容姿が仕事に影響する職についている場合は、特に顔面に醜状痕が残ったことで、ファンや客足が減るなどの理由で労働能力に影響を及ぼす場合もあります。
このように、事案ごとに総合的な判断が必要なので、弁護士に相談することをお勧めします。

また、鎖骨を骨折後、癒合が不全であったために変形が残った場合には、12級5号の後遺症に該当することがあります。しかし、鎖骨変形は、残存したとしてもその運動障害の程度が軽度であるとして、労働能力の喪失が認められない場合があります。

一方で、鎖骨変形の場合であっても、モデル等の容姿が重要視される職業や、スポーツ選手、職人等の少しの運動障害であっても仕事に支障が出る方に痛みが残存している場合等は、労働能力喪失率が認められうることになるでしょう。
このように、鎖骨変形等の場合も事案ごとに総合的な判断が必要なので、弁護士に相談することをお勧めします。

4、逸失利益を請求するステップと弁護士に相談するメリット

上記のとおり、交通事故後の適切な治療を受けてもなお後遺障害が残ってしまった場合や、被害者が交通事故で亡くなった場合には、逸失利益の支払いを請求できます。

どのような手順で請求するのか説明します。

  1. (1)示談

    何らかのトラブルを当事者間の話し合いにより解決することを、示談といいます。

    交通事故による逸失利益について、示談によって円満解決できればそれに越したことはないのですが、必ずしもそうとはいきません。多くの運転手は、運転する自動車について損害保険会社と任意保険を契約しています。そのため、交通事故が起きれば、多くの事案で相手方の保険会社の担当者が事故に遭った運転手に代わって損害賠償の交渉を行います。

    多くの被害者にとって、損害賠償の交渉をするのは人生で初めての体験でしょう。
    一方で、相手方保険会社の担当者は、損害賠償交渉に慣れています。そして、残念ながら、損害保険会社が支払う金額をできるかぎり抑えるため、加害者側にとって有利な金額が提示されることも多いのが実情です。

    相手方保険会社が逸失利益に関する損害賠償額を提示してきたとしても、その金額が受けた被害に対して本当に妥当な金額なのかを被害者が判断するのは極めて困難なことです。
    相手方から金額の提示があっても、即答せず、交通事故事件に対応した知見を持つ弁護士に相談することをおすすめします。

    なお、一度示談が成立すると、あとから損害賠償額が少ないと主張することは極めて困難です。
    よって、示談を成立させるうえでは、極めて慎重な姿勢で臨む必要があります。

  2. (2)調停

    調停とは、裁判所が任命した調停委員を介した当事者間による話し合いです。加害者側との示談交渉がまとまらない場合は、訴訟を提起する前に調停で解決するという方法もあります。

    交通事故における調停では、被害者を申立人・加害者を相手方として、簡易裁判所に対し、相手方に交通事故で受けた逸失利益などの損害賠償を支払うよう申し立てるのが通常です。そして、裁判官1名を含む3名の調停委員が申立人と相手方の主張を聞いたり証拠を調べたりしながら、両当事者の合意の形成を目指します。
    それによって調停が成立すれば、裁判所は調停調書という書類を作成します。和解調書と同様、調停証書は確定判決と同じ効力を有するので(民事調停法16条・民事訴訟法267条)、加害者側が調停で合意したはずの賠償金を支払わない場合は強制執行することが可能です(もっとも、相手方保険会社が成立した示談を破棄してお金を払わないということはまず考えられませんので、強制執行しなければならないケースは稀ではありますが)。

    もっとも、調停を進めたとしても、両当事者の主張があまりにも食い違い、両当事者間で合意が形成できない場合は、調停は不成立となります。その場合は、基本的に訴訟に移行することになります。なお、調停では弁護士が同席することはもちろん、代理人としてご自身の代わりに出席することも可能です。

  3. (3)訴訟

    示談交渉や調停を経ても解決できない場合は、訴訟による解決を目指すことになります。

    日本の裁判制度では、裁判をするときには必ず弁護士を付けなければならないという弁護士強制主義は採られていません。しかし、交通事故による逸失利益などの損害賠償請求訴訟は立証手続きなどが複雑かつ専門的な知識を要するため、やはり弁護士に依頼することが最善といえます。

    交通事故における訴訟では、被害者を原告、加害者を被告とする場合が多いです。
    裁判所は、原告及び被告から提出された主張及び証拠を精査し、損害賠償の金額を判断します。証拠による立証がうまくいかないと、請求した額より大幅に減額されたり、請求自体が棄却されたりすることもあります。
    どういった証拠が主張を裏付けるのかについて裁判手続に不慣れな一般の方が的確に判断していくことは極めて困難ですので、適切な賠償額を獲得するためには、弁護士に訴訟を依頼することが最善です。
    なお、訴訟中であっても、裁判所は両当事者に対し和解を勧告することがあります。これによって和解が成立すると、和解調書が作成されて事件は解決します。

5、まとめ

交通事故の加害者に対して逸失利益を請求する場合は、慎重な姿勢で臨む必要があります。できるかぎり早いタイミングで弁護士に相談することを強くおすすめします。

ベリーベスト法律事務所 北九州オフィスでは交通事故のトラブル全般のご相談を承っております。ぜひお気軽にご連絡ください。あなたのために、ベストを尽くします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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