養育費が高すぎる! と気づいたときに一度決めた金額を変更するには?

2021年04月15日
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養育費が高すぎる! と気づいたときに一度決めた金額を変更するには?

厚生労働省が発表する「令和元年人口動態統計」によると、福岡県の人口千人当たりの離婚率は1.94%と、沖縄県の2.52%に次いで全国で2番目の高さです。

離婚率が高い福岡県ではありますが、離婚する際、子どもがいれば行われることが多い養育費の金額は交渉が大変なものです。離婚のときに養育費を取り決めたとしても、事情によっては養育費が高すぎる状態で、払い続けるのは難しいと悩んでいる方もいるでしょう。

たとえば当初は月6万円の養育費に同意していたとしても、転職で収入が下がったり、病気になったりしては苦しくなるのは当然です。その際、現状にそぐわない「高すぎる養育費」の減額をどのようにしたらいいかを、ベリーベスト法律事務所 北九州オフィスの弁護士がわかりやすく解説していきます。

1、養育費とは

養育費の基本的な考え方は、離婚しなかった場合の子どもが、離婚する前と同等レベルの生活ができることという「生活保持義務」に基づいたものです。その「生活保持義務」のために、子どもを養育している方へ養育していない親がお金を払うと考えておくといいでしょう。

これは親の都合や親同士の関係性にかかわらず、子どもが得られるべき権利です。

子どもをもうけた以上は、そこに責任があり、養育をする義務があります。親になったということは、未成熟な子どもを育てるためのお金を工面することも義務なのです。この基本をおさえ、理解しながら養育費を考えていくとよいかもしれません。

つまり、子どもの生活ランクを下げて、ご自身の生活ランクを上げるような要求は通らないと思ってください。たとえば「毎月6万払っているけれど、今年はレジャーに多くお金を使いたいから、養育費を3万円に減らしたい」という事情では、減額は難しいといえます。ただし、そうでない場合は交渉の余地が出てくるということです。

なお、養育費と不貞行為などで支払う慰謝料とは違うものです。養育費を慰謝料で相殺するといったことは基本的にできませんので、混同しないようにしましょう。

2、養育費はどのように決めるのか

子どものいる夫婦が離婚をするときは、あらかじめ養育費を決めておくほうがよいものです。その際には、まずは話しあいが持たれ、そこでまとまらなければ第三者を交えた交渉に移っていくことになります。

  1. (1)養育費請求調停とは

    第三者を交えた話しあいとして執り行われる代表的なものに「養育費請求調停」があります。家庭裁判所で調停委員が立ち合い、養育費をもらう側(権利者)と養育費を払う側(義務者)の当事者双方から事情を聞いたり、必要な資料を提出してもらったりして、合意を目指した話しあいを進めていく制度です。調停が成立し、合意すると調停調書が発行されます。

    調停が不成立となると自動的に審判に移るケースもあります。裁判官により審判が下されると、審判書というものが作成されます。この審判書は判決や調停調書や公正証書と同じで強制執行(差し押さえ)が可能なものです。

  2. (2)話しあいなしに減額できるのか?

    現在、あなたがいくら養育費の減額を望んでいても、話しあいで決められた金額を勝手に減額することはできません。勝手に減額する場合は、どんな効力を持つ決定事項かによって違いますが、場合によってはご自身の財産の差し押さえまでされてしまう可能性があることを覚悟しておきましょう。

    また、現時点で差し押さえなどの強制執行力がなくても、訴えを起こされてしまったときは、調停や裁判を経て、同じ結果になる可能性もあります。減額をする場合は、きちんとした法的手続きを経ることをおすすめします。その際に弁護士に相談いただければ、状況に適した対応方法などについて、詳細なアドバイスが行えます。

  3. (3)離婚後に決める方法

    養育費を払っているとしても、夫婦の話しあいだけで書類なども作成せず、口約束だけで支払い続けているというケースもあるでしょう。しかしそれでも、話しあいでの減額相談となると、応じてもらえないこともあります。

    その際は、きちんとした取り決めを今からでも始めることができます。「養育費の金額を決められるタイミングは、離婚したときだけ」というわけではありません。家庭裁判所での調停を行えば、客観的な立場を介して、養育費の金額が決定できることになります。

    ただし、調停員はあくまで中立の立場であるため、味方になってくれるわけではありません。弁護士を雇って臨めば、あなたの事情を的確にアピールすることが可能となります。検討する価値はあるでしょう。

3、高すぎる!? 養育費の相場を確認

減額を考えているのであれば、「現在支払っている養育費の金額が一般的な相場かどうか」が気になることでしょう。場合によっては、実は現状が相場よりも低く、家庭裁判所の調停をしたときに増額される可能性もあります。まずはチェックしてみてはいかがでしょうか。

  1. (1)養育費を決める要素

    養育費の決定に欠かせない要素は、養育する子どもの年齢や人数です。また養育する側、養育をしてもらう側の年収も重要になります。それらを考慮して、最終的な養育費をはじき出していくものです。

    ただし、国によって一律に決められた金額があるわけではありません。それぞれの家庭には事情があり、状況が異なるものであるため、決定するまでにはさまざまな話しあいがもたれることになります。用意しなければいけない提出資料も、あればあるほどよいということになります。

  2. (2)養育費計算ツール

    養育費の相場がわかる計算ツールを、ベリーベスト法律事務所で用意しています。まずは、あなた自身のケースをあてはめて計算してみてはいかがでしょうか。

    養育費計算ツール 

    このツールでは家庭裁判所が設定した養育費の算定表に基づいています。計算することによって現状が高すぎるのか、または安いのかが判明するでしょう。ただし、この表はあくまでも目安です。子どもの親たちの生活環境や、子どもに対して行いたい教育の内容などによって養育費は当然異なることになります。よって、最終的には話しあいで決めていくものです。

    高すぎる場合は減額の話しあいの結果、希望額となる可能性もあるかもしれません。ただ現状が相場よりも低い場合は、話しあいを持つことで、逆に高くなる可能性も否定できません。それらも含めて、弁護士に相談いただければ、現状が整理できるでしょう。

4、高すぎる養育費が減額されるケース

上記の養育費計算ツールではじき出された金額が、現状支払っている額よりも高すぎる場合は、減額の話しあいを申し込むことを検討してみてもよいかもしれません。また、以下のような事情で減額が考えられる場合もあります。

ただし養育費計算ツールで高すぎる金額だったからといって、話しあいもなしに支払いを滞らせると、場合によっては財産の差し押さえを強制執行されてしまう可能性もあります。まずは話しあいをして合意を得てから、減額してください。

  1. (1)高すぎる養育費を減額できる相手の事情

    養育費を減額できる相手の事情として考えられるのは、「子どもを養育している方が再婚し、再婚相手の子どもとして、子どもが養子縁組をした」ケースでしょう。

    もし、このようなケースであれば、親権を持たず監護もしていないあなたよりも、新しく子どもの親になった方のほうが、扶養義務の優先度が高くなります。しかも再婚相手に子どもを扶養できるだけの収入などがあれば、「非監護親である実親の養育費を負担する必要はない」と判断されることがあるのです。

  2. (2)高すぎる養育費を減額できるご自身の事情

    養育費を払っている側の収入が、転職や病気などによって減ったとき、もしくは、介護などのためにお金がかかるようになったときなどは、当然、減額をお願いすることができます。前述のとおり、養育費の額は離婚後でも、基本的にいつでも話しあいを持つことはできるのです。

    また、あなた自身が再婚したときも、新しい家族を支えるため、養育費の減額が頭をよぎるかもしれません。しかし、たとえ離れていても、あなたが子どもの親である事実は変わりません。よって、直接の減額には結びつきにくいと考えられます。

    ただし、新しく養育をする子どもが増える場合などは、減額の可能性が出てきます。収入の額は変わらずに分け合う数が増えるのですから当然の成り行きでしょう。家庭裁判所でも事情を考慮してもらえるケースがあります。弁護士に相談することによって、詳しい交渉方法の知恵を得ることができるはずです。

5、高すぎる養育費を減額する方法

現在の状況に比べて、養育費が高すぎる場合は、離婚後であっても、一度取り決めをした後であっても変更は可能です。その方法について解説していきます。

  1. (1)高すぎる養育費を減額する流れ

    減額をしたいと思ったら、まずは話しあいを行うことになります。合意が得られたときは、過去に離婚協議書などを作成していれば、その離婚協議書を変更した旨を記した合意書を作成しておいてください。口約束だけでは、万が一トラブルが起きたとき、前の離婚協議書のままとみなされてしまう可能性が高くなってしまいます。

    もしも話しあいがまとまらない場合は、養育費減額調停の申し立てを家庭裁判所に行うことになります。お互いが合意できれば調停証書が作成され、新たに決まった養育費を支払っていくことになるでしょう。なお、「養育費減額調停」でも互いに納得できなければ、裁判所による審判が行われ、最終的な審判が下されることもあります。

  2. (2)養育費を減額するのに弁護士を雇うメリット

    高すぎる養育費の減額を考えたとき、まず弁護士に相談すると、スムーズに話しあいを進められる可能性が高まるでしょう。

    たとえば、話しあいをするとしても、当事者同士では口げんかのようになり、冷静な話しあいが難しくなるケースが少なくありません。ヒートアップしてしまうような話しあいの場でも、弁護士が介入することによって、理性的な交渉が行えます。

    扶養している親にとって、養育費の減額は、子ども自身の育成環境に大きく影響するものです。当然、相手からの抵抗が大きく、もめるケースが少なくありません。だからこそ、正当な手続きを進めていくためにも、弁護士に仲介してもらうほうが、スムーズな交渉を行えるでしょう。

6、まとめ

養育費を減額するとなると、相手からの抵抗や世間体の悪さもあって、交渉自体を早々に諦めてしまいたくもなるでしょう。子どものためと考えると、なおさらためらいもあるかもしれません。

しかし、現状の生活が厳しいのであれば、思い切って弁護士に相談したほうがよいでしょう。適正な金額の確認や、状況によっては代理で交渉を行ってもらうことも可能です。

ベリーベスト法律事務所 北九州オフィスでは、養育費に関する交渉経験が豊富な弁護士が、高すぎる養育費をどのように減額していくかなど、アドバイスを行います。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています