「夫の暴力(DV)がつらい…」離婚・慰謝料請求のための準備や方法
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福岡県内の配偶者暴力相談支援センター(12か所)が令和4年度に受け付けたDV相談件数は2132件にのぼります。
実際には、相談支援センターなどにも助けを求められず、日々、パートナーからの暴力に悩まされている方も少なくないでしょう。
それでは、暴力を繰り返す夫と離婚をするためには、どうすればよいのでしょうか。この記事では、具体的な「準備」「離婚方法」「相談先」について、ベリーベスト法律事務所 北九州オフィスの弁護士が解説します。
1、暴力(DV)夫と「離婚」「慰謝料請求」する前の準備
暴力(DV)を繰り返す夫と離婚し、慰謝料を請求するために必要な準備について解説していきます。
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(1)アザやケガ、壊された物などの写真をとる
夫の暴力が原因で離婚をする場合には、実際に夫からの暴力があったことを証明する必要があります。そこで、夫の暴力によってアザになった箇所や、投げつけられて壊れた物等の写真をとっておくことが有効です。
DV被害の撮影のポイントは以下の通りです。- ケガをした本人が特定できるように、顔とケガを一緒のフレームにおさめて撮影する
- 足や背中など、顔と一緒に撮影することが難しい箇所については、鏡や自撮り棒を使う、第三者の協力を得るなどして、顔とケガがわかる全体像を撮影する
ただし、ケガや破壊された物の写真だけでは、証拠として十分ではありません。
なぜなら、負傷の結果や壊れた物だけが写った写真では、何が原因により負傷したのか、壊れたのか、わからないからです。
そのため、以下で解説する診断書など、他の証拠と組み合わせて裁判所に提出することが重要となります。 -
(2)病院の診断書をもらう
肉体的な暴力(DV)でケガを負ったり、精神的な暴力(モラハラ)が原因で精神疾患を負ったりした場合には、できるだけ早く病院を受診して、医師に診断書を書いてもらうことが重要です。
医師が作成する診断書は、あくまで負傷の内容や程度などを証明するためのものですが、そのケガや病気の症状について、患者が暴力が原因であることを申告すれば、診断書にそのように記載してもらえる可能性があります。
医師が作成した診断書から直ちに夫の暴力を証明できるわけではありませんが、ご本人が夫の暴力を申告して、ケガや症状を訴えて受診しているという事実は、非常に有力な証拠となります。 -
(3)録音・録画をしておく
夫が妻に暴力を振るっている様子や、物を壊す、怒鳴り声や暴言を発している様子がわかる動画や、録音データは、家庭内暴力の有効な証拠となる可能性があります。
ケガの写真や日記などの証拠だけだと、「本人による自作自演だ」などと反論されてしまうリスクがありますが、相手の挙動や音声が入っている証拠がある場合には、相手も言い逃れがしにくくなります。
ただし、決定的な瞬間を撮影しようと無理をすると、スマホやボイスレコーダーで録音・録画しようとしていることが相手にバレて、相手をさらに激高させてしまうリスクもありますので、危険をおかして証拠を残そうとすることは避けてください。 -
(4)日記をつけるなど暴力(DV)の記録を残す
メモや日記だけでは、決定的な証拠になることは困難ですが、他の証拠を補強する役割があるため記録を残すことは重要です。
メモや日記は、「いつ・どこで・誰が・誰に・どのように・何をした」のか、ポイントがわかるように記載しておくことが重要です。
また、事実と気持ちを分けて記載することも重要です。ご自身の気持ちと、起こった出来事を混同して記載しないようにしておくことで、客観性が生まれ、第三者にも被害を伝えやすくなります。
2、暴力を繰り返す夫と離婚する方法
夫と離婚するための具体的な方法について解説していきます。
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(1)離婚協議
夫婦が離婚する際、まずは離婚協議を行うことが一般的です。離婚協議とは、夫婦が離婚や離婚条件について合意することを目指して話し合うことを指します。
ただし、夫の暴力が原因で離婚しようとする場合には、話し合いで離婚を進めることが難しいケースが多いでしょう。
そこで、夫の暴力が原因で離婚をしようとする場合には、先に別居をしたり、離婚トラブルの解決実績がある弁護士に依頼したりして手続きを進める方法がおすすめです。
物理的に距離を取り、また、弁護士という第三者を介入させることで、暴力の被害に遭うことを回避することができます。 -
(2)離婚調停
相手が離婚の話し合いに応じない場合には、離婚調停を行う必要があります。
離婚調停とは、家庭裁判所の調停手続きを利用して行う離婚手続きのことを指します。
離婚調停では、家庭裁判所の裁判官1名と調停委員2名が当事者の間に入って離婚に関する話し合いを行います。
調停委員は、社会生活上の経験や専門知識を豊富に持っているとされる、弁護士・医師・大学教授・公認会計士・不動産鑑定士・建築士のほか、地域に密着して活躍してきた人物などの中から選出されています。
離婚調停は、配偶者と直接顔を合わせる必要はないため、暴力(DV)夫との接触を避けたい場合、有効な手段のひとつです。 -
(3)離婚裁判
調停離婚によっても、離婚ができない場合には、裁判離婚を提起することになります。
裁判離婚とは、裁判所に訴訟を提起して、裁判所に離婚の可否を判断してもらう手続きです。
ただし、裁判離婚をするためには、民法に規定された特定の離婚原因(「法定離婚事由」という)に該当している必要があります。
法定離婚事由には、以下の5種類があります(民法第770条1項)。- ① 配偶者に不貞行為があったとき
- ② 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- ③ 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- ④ 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- ⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
夫から日常的に暴力を振るわれている場合には、⑤「婚姻を継続し難い重大な事由」があるといえる可能性があるため、妻はそれを離婚原因として主張して、裁判所に離婚を請求することが考えられます。
ただし、裁判離婚では証拠に基づいて事実を認定することになるため、夫の暴力を証明するための証拠が必要となります。
3、暴力に対して慰謝料を請求する方法
夫の暴力が原因で離婚をする場合には、夫に対して慰謝料を請求することができます。
慰謝料とは、妻が負った精神的な苦痛に対して支払われる賠償金のことです。
具体的に慰謝料請求する方法は以下の通りです。
暴力の証拠を提示しながら、慰謝料の金額や支払い方法について話し合います。
弁護士などを介する場合もあります。
② 慰謝料請求調停
慰謝料について話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所の「慰謝料調停請求」により相手に慰謝料を請求することができます
③ 慰謝料請求訴訟
民事裁判で「慰謝料請求訴訟」を提起します。判決までには早くとも6か月、長ければ1年以上かかることが一般的です
慰謝料をいくら請求できるかは、以下の要素を総合的に考慮して算定されます。
- 暴力の内容、回数、期間
- 暴力を受けた結果のケガや精神疾患の深刻さの程度
- 結婚期間や子どもの有無
- 加害者の年齢、収入、資産状況
- 暴力の証拠、立証された被害の多さ
4、夫の暴力に関する相談先
夫から暴力を受けた場合に利用できる相談先、また暴力を受けた場合にとるべき対処法について解説していきます。
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(1)配偶者暴力相談支援センターに相談する
配偶者からの暴力被害に困っている場合には、全国に設置された公的機関「配偶者暴力相談支援センター」に無料で相談することができます。
同センターは、配偶者からの暴力の防止・被害者保護のために、次のような活動を行っています。- 相談や相談機関の紹介
- カウンセリング
- 被害者や同伴者の緊急時における安全の確保や一時保護
- 自立して生活することを促進するための情報提供や援助
- 被害者を居住させ保護する施設の利用についての情報提供や援助
- 保護命令制度の利用についての情報提供や援助
予約による対面、フリーダイヤル、オンライン、メールなどさまざまな方法で相談することが可能です。 -
(2)保護命令の手続きをする
家庭裁判所に保護命令を申し立てることもできます。
保護命令とは、配偶者や生活の本拠を共にする交際相手からの身体に対する暴力などを防ぐため、裁判所が、加害者に対し、被害者やその子ども、親族への「接近」「電話」などによるつきまといを禁ずる命令です。
前述の相談先には、保護命令手続きのアドバイスやサポートを求めることも可能です。また、警察への相談も、後々の重要な証拠になりえます。
ご自身の身の安全を守ることが第一ですので、できるだけ早く専門機関に相談することをおすすめします。 -
(3)弁護士に相談する
夫の暴力が原因で「離婚」や「慰謝料請求」を検討している場合には、離婚トラブルの実績がある弁護士にご相談ください。
弁護士は、有利な証拠の集め方、代理人として夫との交渉、必要に応じて調停離婚・裁判離婚の手続きまでをトータルでサポートします。話し合いや交渉を行う必要がなくなるため、精神的な負担も軽減されるでしょう。また、多くの離婚問題解決に携わってきた弁護士であれば、さまざまな知見から離婚や慰謝料獲得のための具体的なアドバイスも可能です。
お問い合わせください。
5、まとめ
配偶者からの暴力を受けている場合には、相手に離婚や慰謝料の支払いを請求することができます。ただし、いずれの場合にも、相手からの暴力を証明するための証拠が重要となります。
離婚や慰謝料の請求を適切に行うためには、実績がある弁護士に相談することで、悩みや労力を減らすことが可能です。
ベリーベスト法律事務所 北九州オフィスには、離婚問題の解決実績がある弁護士が在籍しておりますので、ぜひご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています