離婚調停中に不貞行為が発覚!慰謝料は請求できる?できない?

2019年10月24日
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離婚調停中に不貞行為が発覚!慰謝料は請求できる?できない?

福岡県北九州市発表の統計によると、平成28年の離婚件数は1848組で、平成27年の1871組より23組減少しました。しかし決して少ないとはいえない数字です。離婚により傷つき、トラブルに巻き込まれて困っている話を聞くことも珍しくありません。
離婚理由の中でも、不貞行為によるものは大変な精神的負担になることと思います。離婚自体がストレスになることの連続なのに、その最中に配偶者が不貞行為をしていたのであれば、なおさらです。

では、離婚調停中の不貞行為が慰謝料請求の対象になるのかを、ベリーベスト法律事務所 北九州オフィスの弁護士が解説していきます。

1、離婚調停中の不貞行為は慰謝料請求の対象になる?

離婚調停中に不貞行為までされては、余計に心理的負担を負わせられて強い憤りを感じることでしょう。むしろ、この期間だからこそ、多くの精神的負担に対する慰謝料をもらいたいと思ってしまうのもわかります。

しかし、離婚調停中の場合は、実はそれが逆に働くことが多いのです。
その点について、解説していきましょう。

  1. (1)不貞行為の慰謝料とは?

    婚姻とはさまざまな契約によって成り立っています。その中のひとつが貞操義務です。
    民法上では離婚を請求できる条件のひとつに、「配偶者に不貞な行為があったとき」と定めてあり、第770条第1項第1号がこれにあたります。この法律が配偶者双方に対して貞操義務を負う根拠となります。

    つまり、不貞な行為をした側(有責配偶者)には、貞操義務違反に基づいて慰謝料を請求できる、ということになっているのです。

  2. (2)離婚調停中でも離婚合意後の不貞行為だとどうなる?

    不貞行為により慰謝料請求できる理由には、「配偶者の不貞行為が原因で婚姻関係が破たんした」という側面があるためです。
    つまり、裁判で争うことになったときは、離婚を決意した理由のひとつが「相手の不貞行為」によるものだという事実を証明する必要があります。

    すでに離婚調停中であれば、対応が難しいケースもあるでしょう。まずは一度、弁護士に相談することをおすすめします。現状の把握をして、不貞行為に対する慰謝料請求ができるかどうかの判断をあおいだ方がよいでしょう。

    また不貞行為の発覚が離婚調停中とはいえ、始まったのがいつかを確かめるべきです。
    それは、次の項目で解説します。

  3. (3)離婚調停前からの不貞行為だった場合は?

    離婚調停中に配偶者の不貞行為が発覚した場合、実は離婚調停前から不倫関係が続いていたという場合があります。この点はしっかりと確かめてください。

    もしも、関係の開始が、調停前や別居前であれば、慰謝料請求の可能性が残されています。もともと相手が離婚調停を始めたきっかけも、不倫相手の存在があるからかもしれないためです。

    非常に微妙なところになってきますので、こちらも離婚問題に対応した経験が豊富な弁護士に相談しながら、話を進めるといいでしょう。
    離婚調停では、調停委員の心証が関わってくるので、ご自身の離婚を優位に進めたいのであれば、時期がはっきりしていなくても、話し合いの中で取り上げたい項目です。

  4. (4)一方が婚姻関係の継続を望んでいる場合の不貞行為は?

    たとえば、不貞行為をされた側が婚姻関係の継続を望んでいる場合はどうなるのでしょう。

    不貞行為をされても、できれば離婚はしたくないという事例は少なくありません。

    また法律的には、不貞行為をした側が「不倫までしているのだから、すぐ離婚できるだろう」と思っていてもそうはいかない仕組みになっています。
    不貞行為をした側(有責配偶者)からの離婚請求は、不貞行為をされた側の離婚請求よりもはるかに厳しく、以前は認められませんでした。実際、これを容易に許してしまうと、離婚目的のために、積極的に不貞行為をしてしまう方が出る可能性もあり、厳しくなるのは当然のことといえるでしょう。

    だからこそ、離婚調停中、まだ片方が婚姻関係の継続を望んでいての調停であれば、その期間中の不貞行為であっても慰謝料請求が認められる可能性が出てきます。
    離婚を望む側から見れば「慰謝料を払えば、離婚できるのか?」と考えるかもしれませんが、それもまた別問題です。

    不貞行為の慰謝料請求は、婚姻関係を継続したままでも行えるものです。
    この場合もそれに当てはまるといえます。

  5. (5)別居期間が長い場合の不貞行為は?

    離婚調停前からすでに長い間、別居していて、お互いに相手のことに関心を失ってしまった夫婦も存在します。
    このように客観的に婚姻関係が破たんしていると認められるような別居状態であれば、不貞行為による慰謝料請求が認められないケースもあります。

    ですが、すでに不仲で別居中の夫婦でも、相手が浮気をしたと知った途端に慰謝料を請求するケースは決して珍しくはありません。
    このような場合には、浮気した側が浮気した時点で、すでに婚姻関係が破たんしていたことを立証しなければいけません。そして、婚姻関係が破たんしていたとまでは認められず、慰謝料を支払うことになるケースも少なくないのです。

    なお、婚姻関係が破たんしていると認められるケースは主に以下のとおりです。

    婚姻関係が破たんしていると認められる主なケース

    • 別居中ですでに離婚調停を進めており、双方が離婚への合意を表明している
    • 同居期間に比べて数倍もの別居期間が継続している
    • 長期にわたる別居中、夫婦間のやりとりが全くない

2、慰謝料請求に必要な、離婚調停中の不貞行為の証拠とは?

離婚調停中であっても慰謝料を請求するために必要なのは、不貞行為の証拠です。
しかもすでに離婚調停中であることから、夫婦関係が破たんしていると思われる場合は、その不貞行為が離婚調停よりも前に始まっていたことを証明することが大事です。

  1. (1)不貞行為の有効となる証拠とは?

    不貞行為の証拠として有効なものを以下にあげていきます。

    • メールやSNS
    • 肉体関係が確認されるようなやりとり
    • 手帳、スケジュール帳
    • 不貞相手との密会がメモされている可能性があります
    • 手紙、メモ
    • 手紙やメモなどから不貞の事実が推測されるもの
    • 録音データ
    • 不貞の疑いのある配偶者との会話の録音、不倫を認めた発言
    • ETCの記録
    • クレジットカードの明細書にETCの記録が記載されています。
      ここから配偶者の行動範囲がわかります。
      不貞相手との密会までの場所が残っているかもしれません。またその頻度もわかるでしょう
    • 領収書類
    • 不貞相手と配偶者が宿泊したホテルの領収書や高級レストランの領収書など
    • 第三者の証言
    • たとえば、「不貞相手とのデートの現場を目撃した」というような第三者の証言
    • あなたの日記
    • どんなことがあったかの客観的事実を残しておきましょう


    上記のいずれの証拠も肉体関係があったかどうかを重要視して集めておきましょう。

    また離婚調停前に不貞が行われていたことが明確とできるものであれば、より有利な証拠となります。もちろん、離婚調停後のものでも集めておいてください。

    どこから推察されるかわからないので、なるべくたくさん集めることをおすすめします。

  2. (2)不貞の証拠の集め方

    せっかく証拠になると思って集めたものでも、内容や集め方によっては証拠とは認められないということは、少なくありません。裁判でも有効となる証拠は、「いつ」「誰が」「どこで」「何をしたか」がはっきり示されている必要があります。
    したがって、「誰が」「何を」しているのか不明瞭なものは、原則として証拠にはなりません。

    ですが、とりあえずは証拠となりそうなものを集めることで、類推することはできますので、諦めないで証拠を積み重ねていってください。

  3. (3)不貞行為の慰謝料請求権には時効がある

    また、注意すべきことは不貞行為の慰謝料請求をする権利の時効です。
    慰謝料請求権は、不貞行為の事実や相手方を知り、訴えることが可能な状態になってから3年で消滅するとされています。
    離婚調停中の前から継続している不貞関係の証拠といっても、古すぎると証拠として機能しないということです。

  4. (4)悪質な探偵事務所・興信所には注意

    ところで、不貞の証拠をつかもうとして、探偵事務所や興信所に依頼することを、お考えの方もいるでしょう。
    しかし、そのときは注意が必要です。残念ながら悪質な業者も多く、たいした調査もしていないのに、高額の金銭を請求してくることもあるようです。

    危険な業者を使うよりは、まずは弁護士に相談いただければと思います。
    状況によって、提携している業者を紹介することもできます。

3、不貞行為の慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット

不貞行為の慰謝料請求をする場合、特に離婚調停中であるならば、弁護士に依頼することでメリットを得られることが多いものです。

離婚調停の経験が豊富な弁護士であれば、どういった証拠を集めて、どうアプローチすれば優位に立てるかの戦略があります。離婚調停で提出したり証言したりした内容をもとに審判や裁判が行われるケースもあります。判断が難しい場面であればあるほど、裁判経験の多い方が有利となるはずです。
また、依頼内容によっては、調停中の煩雑な書類作成や、苦痛を伴う配偶者とのやりとりの代理も可能です。

依頼者の負担と時間を減らすことを考える弁護士の活用を、検討することをおすすめします。

4、まとめ

離婚調停中であればこそ、配偶者が浮気や不倫をしていたりしたら、大変なショックを受けることでしょう。しかも、離婚調停中だからこそ、慰謝料が認められないなどということになったら、ダブルでショックを受けてしまいそうです。

そうならないためにも、なるべく早めに弁護士に相談いただき、現状を把握することをおすすめします。離婚調停中の不貞行為であっても、慰謝料請求ができる可能性はゼロではありません。

まずはベリーベスト法律事務所 北九州オフィスまでご相談ください。
離婚や慰謝料請求の解決実績が豊富な弁護士が、親身になって対応します。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています