0120-277-045

平日9:30〜21:00/土日祝9:30〜18:00

メールでのお問い合わせ 24時間・365日受付
メニュー メニュー

空手や武道の有段者(黒帯)がケンカをしたら傷害罪に問われる、は本当?

2023年10月26日
  • 暴力事件
  • 空手
  • 有段者
  • 傷害
空手や武道の有段者(黒帯)がケンカをしたら傷害罪に問われる、は本当?

東京オリンピック2020において初めて正式種目として採用されたことで、「空手」の注目度は大きく高まりました。現在の沖縄県である琉球(りゅうきゅう)王国で受け継がれてきた武術と中国拳法が融合して生まれた空手には、形の技や組手のルールが異なるさまざまな流派があり、日本各地に各流派の道場が開かれています。

北九州市にも、全日本空手道連盟・日本空手協会・極真空手など各流派の道場があり、競技としても、また青少年の健全育成や社会人の健康維持などとしても、多くの人が空手に関わっております。

空手に限らず、武道や格闘技をたしなんでいる人の間では、練習や稽古、競技のほかの場所で技や技術を使わないように指導されます。しかし、「プライベートなシーンで武道の有段者などがケンカをすれば、傷害罪などに問われて一方的に罪を問われる」といったうわさ話や都市伝説を聞いたことがある人も多いでしょう。

本コラムでは、空手など武道の有段者がケンカをして相手にケガをさせてしまったときに問われる罪や、一方的に不利になってしまうといううわさの真相などを、ベリーベスト法律事務所 北九州オフィスの弁護士が解説します。

1、空手など武道の有段者はケンカで相手をケガさせると不利になるのか?

空手などの武道を習う際には、指導者から「ケンカに技や技術を使ってはならない」と教えられるものでしょう。
また、有段者である証しとなる黒帯を得た節目にも「有段者がケンカをして相手にケガをさせると一方的に不利になる」といった教えを受けることがあります。

以下では、武道の有段者がケンカで相手をケガさせた場合の法律上の扱いについて解説します。

  1. (1)「有段者だから」という理由だけで一方的に不利になるわけではない

    ケンカが刑事事件に発展する場合、問題となるのは「刑法」の定めです。
    しかし、刑法のどこをみても「有段者の場合は厳しく罰する」「有段者と素人がケンカした場合、有段者のみを罰する」といった規定は存在しません

    結論からいえば、法律上、「有段者がケンカで相手にケガをさせると一方的に不利になる」という情報は間違いだといえます。

  2. (2)有段者であることを理由に不利な扱いを受けることもある

    「有段者であると必ず不利になる」というわけではありませんが、有段者であることを理由に不利な扱いを受ける場合もあります。

    空手は、みずからの肉体と技を鍛えて武器を使わず素手で戦う徒手空拳の武道です。
    訓練された素早い突きや重い蹴りは、修練を積んでいない素人にとって武器以上の脅威になり得ます。
    相手の攻撃もかわしたり受け流したりといったことができるので、お互いが攻撃をしかけてケンカをしていても、空手経験者の攻撃だけが一方的に決まる展開になるケースも少なくありません。

    攻撃力が高い技を繰り出したり、人体へのダメージが大きな急所に攻撃したりといった状況があれば「有段者であれば重大な結果につながる認識があったはずだ」という評価を受けやすくなります
    そのような評価が影響して、空手など武道の有段者が一般の人とケンカをすると不利な扱いを受けることになる場合もあるのです。

2、空手に関する有名な事件

以下では、空手に関して起きた有名な刑事事件について紹介します。

  1. (1)勘違い騎士道事件

    空手の技を使ったケンカがどのような扱いを受けるのかを示す有名な事件が、昭和56年に起きた「勘違い騎士道事件」です。

    路上で酩酊(めいてい)した女性とそれをなだめていた男性がもみ合ううちに、女性が鉄製のシャッターにぶつかって尻もちをついたところを目撃した空手有段者が「女性が暴行を受けている」と勘違いしてしまい、男女の間に割って入りました。
    男性が「襲われるかもしれない」と身構えてボクシングのファイティングポーズのような姿勢を取ったため、有段者も同じように「襲い掛かってくるかもしれない」と感じ、自分と女性を守ろうと考えて、男性の顔面に回し蹴りを繰り出しました。
    有段者が繰り出した回し蹴りは男性の右顔面に命中して、男性は転倒の際に頭がい骨骨折などの重傷を負い、そのケガが原因で起きた脳硬膜外出血などで死亡してしまったのです。

    この事件で有段者側は「自分と女性の身を守るためだった」として無罪を主張して、第一審ではその主張が認められて無罪となりました。
    しかし、第二審では「防衛の手段としてほかにも方法があったはずであり、重大な障害や死亡の結果を生じさせる危険な攻撃を繰り出した」と評価され、有罪となります。
    さらに最高裁でも「防衛手段として相当性を逸脱している」として有罪判決が下されましたが、一方で「身を守るためだった」という目的は認められて、刑罰が減じられる結果となったのです。

  2. (2)空手練習事件

    空手の練習や競技のなかでは相手の身体に技を当てる場面もありますが、通常は刑法第35条の「正当行為」として処罰されません。
    しかし、必ずしも「練習中だった」「試合の最中だった」という理由が認められるわけではないという事例が、昭和61年に起きた「空手練習事件」です。

    この事件では、独学で空手を身につけていた友人同士のふたりが、夜の歩道上でお互いに空手の技をかけあっていた最中に、一方が興奮して相手の胸部・腹部・背部などを数十回にわたって殴打したり、革製ブーツを履いたまま足蹴りしたりといった攻撃を加え、死亡させてしまいました。

    加害者の男は「空手の練習として相手も承諾していた」という理由で無罪を主張しましたが、練習場所として不相当な場所であったこと、正規のルールに従わず危険な方法で練習をしていたことなどから、社会的に相当とはいえないとして、有罪判決が言い渡されました。

3、ケンカで相手にケガを負わせたときに問われる罪

以下では、ケンカで相手にケガを負わせてしまったときに問われる可能性のある罪を解説します。

  1. (1)傷害罪

    人の身体を傷害した者は、刑法第204条の傷害罪に問われます。
    ここでいう「傷害」とは、人の生理機能に障害を与えること、簡単にいえば「ケガをさせること」を指していると考えておけばよいでしょう。
    刑法の条文に照らすと、ケガの種類や程度は問わないので、擦り傷や打撲といった軽いケガでも傷害罪の成立は免れられません。

    なお、傷害罪の成立には「故意」が必要です
    故意とは、罪となる事実を認識し、かつ、その実現を意図または許容することを意味しています。
    傷害罪における故意とは、「相手にケガを負わせる」という認識がある場合のみならず、「相手にケガを負わせる」という認識まではなくても、殴る・蹴るといった暴行の故意さえあれば足りるとされています。

    傷害罪に問われた場合、15年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。

  2. (2)傷害致死罪

    人の身体を傷害した結果、その人を死亡させた者は、刑法第205条の傷害致死罪に問われます。
    相手を死に至らしめる意図がなかったとしても、人の死という重大な結果を生じさせれば処罰は免れられません

    傷害致死罪の法定刑は、3年以上の有期懲役です。

4、相手が一方的に攻撃してきたので反撃した場合はどうなる?

空手などの武道を経験していれば、ケンカに発展しそうな場面でも自重するものです。
しかし、相手のほうが一方的に攻撃をしかけてくることもあります。
みずからは攻撃を禁じていても、相手からの一方的な攻撃を受け入れるわけにはいかないので、身を守るために反撃する展開もあり得るでしょう。

以下では、武道の有段者が相手からの攻撃に対して反撃した場合には、法律的にはどのような扱いを受けるのかについて解説します。

  1. (1)正当防衛にあたる可能性がある

    まず前提となるのは、ケンカにおいては「どちらが先に攻撃したのかにかかわらず、お互いが攻撃を加えて相手にケガを負わせた場合には、両方が罪を問われる」ということです。
    よく「先に手を出したほうが悪い」と言われることもありますが、実際には刑法にはそういった規定は存在しません。
    法律の定めに従えば、いわゆるけんか両成敗の考え方により、お互いが罪を問われることになるのです

    ただし、刑法には「正当防衛」という規定も存在しています。
    刑法第36条1項は「急迫不正の侵害に対して、自己または他人の権利を防衛するため、やむを得ずした行為は、罰しない」と明記しており、正当防衛が認められる場合は処罰されません。

    たとえば、突然相手が殴りかかってきたという状況なら、急迫不正の侵害という点が満たされるため、自己防衛の範囲でやむを得ず相当な手段で反撃しても無罪になる可能性があります。

  2. (2)行き過ぎた防衛行為は過剰防衛にあたる危険もある

    正当防衛が認められるのは、自己防衛の範囲でやむを得ずした行為だけです。
    防衛の程度を超えてしまうと「過剰防衛」になります。

    たとえば、先に紹介した勘違い騎士道事件は「相手が襲い掛かってくるかもしれない」という思い違いから生じた事例です。
    このようなケースを「誤想過剰防衛」といいます。
    そして、過剰防衛にあたる場合は、無罪にはなりません
    ただし、裁判官の判断によって刑の減軽や免除を受けられる可能性があります。
    減軽とは、法律が定めている刑罰の上限や下限を減じる処分なので、減軽が適用されると結果的に言い渡される刑罰が軽くなります。

5、空手など武道の有段者がケンカでトラブルになったら弁護士に相談を

空手など武道の有段者がケンカをしてしまい、相手とトラブルになってしまった場合は、弁護士に相談しましょう。

  1. (1)被害者との示談交渉による穏便な解決が期待できる

    ケンカで相手にケガを負わせてしまった場合は、被害者との示談交渉を急いだほうがよいでしょう。
    謝罪を尽くし、治療費や精神的苦痛に対する慰謝料などを含めた示談金を支払うことで、被害届の提出を見送ってもらったり、すでに提出済みでも取り下げてもらったりできれば、事件を穏便に解決できる可能性が高まります。

    ただし、被害者との示談交渉は決して簡単ではありません。
    多くの被害者は、加害者に対して強い怒りを感じています。
    そして、被害者が加害者と直接の連絡をとること自体を拒否することがあります。また、捜査機関は、加害者に対して加害者の情報を教えることはない一方で、被害者の了承を得たうえで弁護士のみにという限定で被害者の連絡先を教えてくれることがあります。そこで、被害者に対して示談交渉尾する際には、ご自身で対応をするのではなく、弁護士を窓口として示談交渉を進めることをおすすめします。

  2. (2)厳しい処分を避けるための弁護活動が期待できる

    空手など武道の有段者だからといって、それだけの理由で一方的に罪を問われるわけではありません。
    刑法の考え方に従えば、お互いに攻撃を加えていれば両方が処罰の対象となります。
    ただし、空手など武道の経験があることは、罪の重さや正当防衛が認められる範囲などの判断において不利にはたらくおそれがあります。

    厳しい刑事処分を回避するためには、やはり弁護士のサポートが欠かせません
    弁護士のサポートとしては、被害者との示談交渉を進めるなど加害者にとって有利な証拠を集めて、検察官働きかけをして不起訴処分を得られたり、裁判において収集した証拠を裁判官に提示しつつ適切な法的主張をすることで正当防衛・過剰防衛が認められて処分が軽い方向へと傾くようにすることが考えられます。

6、まとめ

空手など武道の有段者がケンカで相手にケガをさせたからといって、必ずしも「有段者だけが一方的に処罰される」というわけではありません。
相手の攻撃によってケガを負わされていれば、相手も傷害罪などの罪を問われます。
ただし、武道の経験があることは「ほかにも防衛手段があったはずだ」「やり過ぎた」といった判断につながりやすく、不利な扱いを受けるおそれがあることも否定できません。

空手など武道の有段者がケンカなどのトラブルを起こしてしまった場合は、弁護士に相談して解決に向けたサポートを受けましょう。
厳しい刑罰を避けるための弁護活動は、刑事事件の解決実績を豊富にもつベリーベスト法律事務所の弁護士におまかせください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

お気軽にお問い合わせください ご相談の予約はこちら

0120-277-045

平日9:30〜21:00/土日祝9:30〜18:00

メールでのお問い合わせ
24時間・365日受付

お気軽にお問い合わせください ご相談の予約はこちら

北九州オフィスの主なご相談エリア

北九州市小倉北区、北九州市門司区、北九州市若松区、北九州市戸畑区、北九州市小倉南区、北九州市八幡東区、北九州市八幡西区、福岡市東区、福岡市博多区、福岡市中央区、福岡市南区、福岡市西区、福岡市城南区、福岡市早良区、大牟田市、久留米市、直方市、飯塚市、田川市、柳川市、八女市、筑後市、大川市、行橋市、豊前市、中間市、小郡市、筑紫野市、春日市、大野城市、宗像市、太宰府市、古賀市、福津市、うきは市、宮若市、嘉麻市、朝倉市、みやま市、糸島市、筑紫郡那珂川町、糟屋郡宇美町、糟屋郡篠栗町、糟屋郡志免町、糟屋郡須恵町、糟屋郡新宮町、糟屋郡久山町、糟屋郡粕屋町、遠賀郡芦屋町、遠賀郡水巻町、遠賀郡岡垣町、遠賀郡遠賀町、鞍手郡小竹町、鞍手郡鞍手町、嘉穂郡桂川町、朝倉郡筑前町、朝倉郡東峰村三井郡大刀洗町、三潴郡大木町、八女郡広川町、田川郡香春町、田川郡添田町、田川郡糸田町、田川郡川崎町、田川郡大任町、田川郡赤村田川郡福智町、京都郡苅田町、京都郡みやこ町、築上郡吉富町、築上郡上毛町、築上郡築上町にお住まいの方

ページ
トップへ