リベンジポルノ防止法に問われる行為とは? 問われる罪と刑罰
- 性・風俗事件
- リベンジ ポルノ防止法
- 違反
別れた恋人に報復するためなど、嫌がらせ目的で裸や性行為の画像をSNSなどで公開する、いわゆるリベンジポルノ行為は違法です。リベンジポルノ行為は、リベンジポルノ防止法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)によって処罰の対象であり、逮捕される可能性もあります。
この記事では、リベンジポルノ防止法で禁止されている行為やリベンジポルノ防止法に違反した場合に科される刑罰、逮捕された場合の対処法などについて、ベリーベスト法律事務所 北九州オフィスの弁護士がわかりやすく解説します。
1、リベンジポルノ防止法に違反した場合はどうなる?
まず、リベンジポルノ防止法が制定された背景や科される罰について解説します。
-
(1)リベンジポルノ防止法とは?
リベンジポルノ防止法とは、正式には、「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」といい、平成26年(2014年)11月27日から施行されている法律です。
このような法律が制定されることになった背景には、破局したことの腹いせや嫌がらせ、または復縁を迫るために、元交際相手や元配偶者の性的な画像・動画をその撮影対象者の同意を得ることなく、SNSやインターネット上の動画投稿サイトなどにさらす、いわゆる「リベンジポルノ」行為が、社会問題となったことが挙げられます。
リベンジポルノ行為は、インターネットを通じて性的な画像・動画が不特定多数に公開されてしまうことで、拡散が繰り返され、被害を受けた方が大きな精神的な苦痛を負うことになります。
そこで、平成26年に制定されたリベンジポルノ防止法によって、リベンジポルノ行為は、私生活の平穏を侵害する行為として処罰されることになりました。 -
(2)リベンジポルノ防止法違反で科される罪とは?
リベンジポルノ防止法に違反する行為に対しては、「懲役刑」と「罰金刑」が刑罰として規定されています。
「懲役刑」とは、身体的な自由を奪われる自由刑で、受刑者を刑事施設に拘置して一定の労働(刑務作業)に服させる刑罰です。労働義務があるという点が禁錮刑とは異なります。
リベンジポルノ防止法に違反した場合には、「3年以下」または「1年以下」の有期懲役刑が科される可能性があります(リベンジポルノ防止法第3条1項、2項)。
これに対して「罰金刑」とは、一定の金額の支払いを命じられる刑罰です。リベンジポルノ防止法に違反した場合には、「30万円以下」または「50万円以下」の罰金が科される可能性があります(リベンジポルノ防止法第3条1項、2項)。
2、リベンジポルノ防止法で禁止されている行為
リベンジポルノ防止法では、具体的にどのような行為が禁止されているのでしょうか。
-
(1)対象は「私事性的画像記録」
まず、リベンジポルノ防止法の対象となるものは、「私事性的画像記録」と呼ばれるものです。
この私事性的画像記録とは、次のような人の姿態が撮影された画像にかかる電磁的記録その他の記録のことをさします。リベンジポルノ防止法 第2条- 性交または性交類似行為にかかる人の姿態
- 他人が人の性器等(性器、肛門又は乳首)を触る行為、または人が他人の性器等を触る行為にかかる人の姿態で、性的に興奮させまたは刺激するもの
- 衣服の全部または一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位(性器等もしくはその周辺部、臀部または胸部)が露出されまたは強調されているものであり、かつ性欲を興奮させまたは刺激するもの
参考:「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」(e-GOV)
また、上記のような人の姿態が撮影された画像、電磁的記録にかかる記録媒体等を「私事性的画像記録物」といいます。たとえば、他人の裸や性行為の画像・動画が保存されている印刷物、CD-ROM、USBメモリなどは私事性的画像記録物に該当するでしょう。
ただし、撮影対象者が撮影者や第三者が閲覧することを認識したうえで撮影を承諾した場合は、「私事性的画像記録」からは除外されます。 -
(2)私事性的画像記録の公表
第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、インターネット上で私事性的画像記録を不特定多数の人に提供する行為は、私事性的画像記録の「公表罪」にあたります(リベンジポルノ防止法第3条1項)。
また、同様の方法で、「私事性的画像記録物」を不特定多数の人に提供、または公然と陳列する行為も、公表罪です(同法条2項)。
なお、元交際相手の浮気に復讐(ふくしゅう)するために、裸が写った画像や動画をインターネット上にアップロードするという行為だけではなく、面識がない相手であっても、風呂や更衣室での姿を盗撮して動画投稿サイトに投稿したりする行為も、「公表罪」に該当する可能性があります。
それでは、女性の顔にモザイク処理や、トリミングをして顔がわからないようにした場合にも、「第三者が撮影対象者を特定することができる方法」といえるのでしょうか。
この場合、部屋の様子や背景、音声など、誰であるのかを特定することができる情報が写っていれば、公表罪の適用を受ける可能性があります。
これに対して、インターネット上にはアップロードされたものの、鍵付きのアカウントや非公開、限定公開にしているような場合には「不特定又は多数の者」が認識できる状態に置いたとはいえないため、公表罪には該当しない可能性があります。
公表罪に問われた場合には、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。 -
(3)私事性的画像記録の公表目的での提供
公表させる目的で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を提供し、または私事性的画像記録物を提供する行為は、私事性的画像記録の「公表目的提供罪」に該当します(リベンジポルノ防止法第3条3項)。
たとえば、「SNSで拡散してほしい」と第三者に依頼した場合や、提供した人物が拡散すると確信して特定の第三者に提供した場合には、公表目的提供罪が成立する可能性があります。
公表目的提供罪に問われた場合には、1年以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。
3、リベンジポルノで有罪となるリスクや影響
リベンジポルノ防止法に違反したときに考えられる、リスクや影響について解説します。
-
(1)前科・前歴がつく可能性がある
リベンジポルノ防止法に違反する行為をした場合には、前科・前歴がつくリスクがあります。
前科とは、リベンジポルノ防止法の罪で起訴され、刑事裁判において有罪判決が確定したという記録です。勤務先に知られた場合、懲戒処分になる可能性があることや、職業制限を受ける職種があるなど、生活のさまざまな面において不利益が生じます。
一方、前歴とは、リベンジポルノ防止法違反の罪で逮捕等、捜査の対象となったという記録のため、有罪にならなかった場合にも残ります。前歴は、世間に知られることは基本的にありませんが、捜査機関のデータベースに残り続けます。 -
(2)損害賠償を請求されるリスクがある
リベンジポルノ行為は、民法に規定されている不法行為に該当します(民法第709条)。そのため、被害者から民事訴訟を提起され、多額の損害賠償を請求されるおそれもあります。
インターネット上に公開された性的画像・動画を完全に削除することは難しく、被害者は多大な精神的な苦痛を受けることになります。具体的な金額は事案の内容によることになりますが、慰謝料額も大きくなる可能性があります。 -
(3)社会的信用を失うリスクがある
リベンジポルノ行為が事件化してしまうと、社会的信用を失うリスクがあります。
逮捕されず在宅事件となった場合には、通常の生活を送りながら捜査に協力することになりますが、逮捕、勾留された場合には、最長で23日間身体的な拘束を受ける可能性があります。長期間、通常の社会生活を送ることができなくなるため、勤務先や学校に事件が発覚する可能性は高まるでしょう。
また、インターネットやニュースなどで報道されると、瞬く間に情報は拡散されてしまいます。リベンジポルノは被害者がおり、また被害者に与える影響が大きい事件でもあるため、知人友人などに知られてしまうと、その後の関係性に大きく影響を及ぼす可能性は否定できません。
4、リベンジポルノで逮捕された場合に弁護士へ相談するメリット
リベンジポルノで逮捕された、もしくは逮捕されそうな場合には弁護士への相談をしてください。この章では、弁護士に相談するメリットを解説します。
-
(1)取り調べのアドバイスを受けることができる
警察から呼び出された場合や、逮捕された場合には、すぐに弁護士に相談しましょう。
弁護士から、取り調べについてアドバイスをもらえれば、適切な対応をとることができます。また、逮捕後・勾留前に面会ができるのは弁護士だけです。家族であっても、連絡することも、面会することもできません。何もわからない状況は非常に不安ですが、弁護士と面会ができれば今後の流れや、捜査状況を確認することができます。また、ご家族や会社へ連絡してもらうことも可能です。
逮捕後の適切な対応が、その後の流れを決めるといっても過言ではありません。刑事事件においては、迅速な弁護士への依頼が重要となります。 -
(2)相手との示談交渉を任せることができる
示談とは、事件について謝罪し一定の示談金を支払うことで、被害者から許しを得ることです。示談が成立した場合、事件の違法性が一定程度減少したとして、検察官が不起訴を判断する可能性にも期待できます。
リベンジポルノ法の「公表罪」「公表目的提供罪」は、親告罪(しんこくざい)といって、被害者が告訴をしなければ、起訴されることがない罪です。つまり、被害者が告訴しない、または告訴を取り下げてくれるかは、非常に重要です。
示談が成立した場合、被害者が告訴を思いとどまる、または取り下げてくれる可能性は高まるでしょう。
なお、リベンジポルノの加害者と被害者は面識があることが多いですが、加害者やその家族などが直接交渉をすることは、事態を悪化させることになりかねません。また、話すことを拒否される可能性も多いにありえます。示談交渉は、被害者に寄り添いつつも、知見を元にした適切な交渉ができる弁護士に依頼してください。
お問い合わせください。
5、まとめ
リベンジポルノ防止法に違反すると、公表した場合は「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」、提供した場合は「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」の刑罰が科される可能性があります。
リベンジポルノで警察から呼び出しが来ている場合などには、すぐに弁護士に相談するようにしてください。
ベリーベスト法律事務所 北九州オフィスには、リベンジポルノ事件などの、刑事事件の経験豊富な弁護士が在籍しております。ぜひ、お問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています