痴漢容疑で後日逮捕される可能性はある? 不安な場合にやっておくべきことは

2021年04月15日
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痴漢容疑で後日逮捕される可能性はある? 不安な場合にやっておくべきことは

令和3年4月、福岡県警大牟田署は、大牟田市内の路上で女性が体を触られる痴漢容疑事件が発生したとして、防犯メールで注意を呼びかけました。

痴漢で現行犯逮捕されるシーンは、テレビの特集番組でもしばしば見かけますが、では、痴漢行為をして現行犯逮捕されなければ、罪に問われることがないのでしょうか。痴漢行為の後、被害を受けた女性が迷惑防止条例違反の被害者として警察に相談したら、あなたはどうなるのかをご存じですか。

警察が捜査して、自宅や職場を特定されて後日に逮捕される可能性はあるのか、現行犯でなくても逮捕されるのかなどを、北九州オフィスの弁護士が解説します。

1、「痴漢」行為で成立する犯罪とは

一般的に、相手の同意なく故意にわいせつな意図を持ち他人の身体に触れる行為は俗に「痴漢」と呼ばれています。しかし、「痴漢罪」という犯罪は存在しません。では、どのような罪に問われることになるのでしょうか。

  1. (1)迷惑防止条例違反

    痴漢行為は、その犯行内容によって、問われる罪が異なります。たとえば、着衣の上から体に触れた、なでた、もんだ、つかんだなどのケースでは、迷惑防止条例違反として罪が問われるケースがほとんどでしょう。

    迷惑防止条例は、都道府県ごとに定められている条例です。北九州市で起きた痴漢事件に適用されるのは、福岡県迷惑行為防止条例です。

    福岡県迷惑行為防止条例第6条では、公共の場所または公共の乗物において、正当な理由なく人を著しく羞恥させ、または不安を覚えさせるような方法で、他人の身体に直接、または衣服その他の身に着ける物の上から触れることを禁じています。

    違反すると、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処すると定めています。いずれの刑罰が課されることになっても、当然前科がつくことになります。

  2. (2)強制わいせつ罪

    刑法第176条に定められた犯罪で、「13歳以上の者に対し、暴行または脅迫を用いてわいせつな行為」をすると、問われる罪です。13歳未満の者に対してわいせつな行為をしたときは、たとえ暴行や脅迫を用いていなくても強制わいせつ罪に問われます。

    強制わいせつ罪では迷惑防止条例と異なり、13歳以上の者に対しては暴行または脅迫を用いたことが要件とされています。したがって、着衣の上から体を触る等のわいせつ行為を行う前に、相手を殴る、相手の体を押さえつけるといった暴行行為や、「騒いだら殺すぞ」等の言葉による脅迫行為があった場合には、強制わいせつ罪に問われうることになります。

    強制わいせつ罪として起訴され、有罪となったときは、6月以上10年以下の懲役に処されます。罰金刑の設定がなく、執行猶予付き判決が出ない限り、刑務所での懲役という非常に重い処罰を受けることになります。

2、痴漢容疑で後日逮捕される可能性は?

冒頭で述べた通り、痴漢行為は犯行現場で身柄を拘束され現行犯逮捕されるケースが多いという印象があります。実際にその通りではあるのですが、現場では身柄の拘束を受けず、帰宅できた場合、逮捕されないと考えてよいのでしょうか。

  1. (1)後日でも逮捕されるケースもある

    結論から言えば、「逮捕される可能性はある」といえます。そもそも、現行犯逮捕の他に通常逮捕という手続きがあります。

    「通常逮捕」とは、警察官が逮捕状により行う逮捕のことをいいます。逮捕状を用意するためには、捜査機関が犯行の証拠を収集し、裁判所に逮捕状を請求する必要があります。したがって、通常逮捕を行う際は、基本的に犯行後日にならなければできないというわけです。

    他方、現行犯逮捕は、警察官でなくても誰でも行えます。犯人が罪を犯したその場やその直後である場合等に限って許されるものです。痴漢は圧倒的に現行犯逮捕が多いと考えられる理由は、現行犯逮捕は被害者や目撃者でも逮捕できるためといえるでしょう。

    したがって、その場で逮捕されなかったとしても、被害者が後日になって被害届を出し、逮捕できるだけの証拠があるケースでは、逮捕される可能性は十分にあります。

  2. (2)証拠となりえるものは?

    証拠がなければ逮捕できませんが、近年では捜査技術が発達していて、証拠をつかみやすくなっているようです。

    主に、以下のような証拠を根拠として犯行後日に逮捕される可能性があります。
    ●防犯カメラの映像
    防犯カメラの映像により、犯行が可能な位置にいるか、もしくは犯行を実際に行っていたかどうかが判断されます。防犯カメラの性能は年々向上しているため、特定もされやすくなっているといえるでしょう。

    ●被害者に付着した皮膚のDNA
    被害者が抵抗して爪で引っかき爪の間に入った皮膚などを証拠として提出していれば、それも証拠となりえます。目撃情報など複数の証拠を組み合わせることで、後日に逮捕される可能性が高まるでしょう。

    ●犯行時に使用していた電子マネーや定期券の履歴、落とした身分証明書
    SUGOCAやその他電子マネーの使用履歴なども犯行現場にいたという証拠になりえます。

  3. (3)後日逮捕される際の流れ

    犯行当日に逮捕されずに後日逮捕されるときは、前述の通り、さまざまな手続きが必要です。したがって、いつ実際に逮捕されてしまうのかは誰にもわかりません。場合によっては事件から数年経過したころに逮捕されることもあるでしょう。

    容疑が迷惑防止条例違反だけであるならば、逮捕状が発行される前に、警察から電話などを通じて呼び出しを受ける可能性があります。任意聴取はもちろん任意であるため、拒否することは可能です。しかし、警察が連絡をしてきた時点ですでに一定程度証拠がそろっていることが推測されるため、任意聴取を拒否すると逃亡のおそれがあるとして逮捕されてしまう可能性が高まると考えられます。したがって、通常逮捕を回避するためには、警察から呼び出しを受けたときは素直に応じたほうがよいでしょう。ひとりで警察に向かうことに不安があるときは、弁護士に依頼をすれば任意聴取にも同行します。

    犯行後日に逮捕されるとき、逮捕される場所の多くは自宅です。この際も逮捕状を出す前に任意同行を求められることがあるでしょう。ただし、会社や学校で逮捕される可能性も否定できません。

    逮捕された後は、刑事訴訟法に定められた流れに沿って、刑事手続きが進められることになります。

3、弁護士に相談しておいたほうがよい理由

痴漢による迷惑防止条例違反または強制わいせつの容疑によって捜査対象になっている可能性があるのであれば、非常に不安を感じていることでしょう。逮捕されてしまえば、あなた自身の社会生活に大きな影響を及ぼす可能性は否定できません。

そこで、どのような行動を起こすにしても、あらかじめ弁護士に相談することをおすすめします。刑事事件に対応した経験が豊富な弁護士であれば、後日逮捕される可能性から、逮捕されたときの対応方法、身柄の拘束を受けてしまう事態を回避するための方法についてアドバイスを行います。

また、自首を決意した際はもちろん、任意聴取を求められた際に同行することもできます。後日、自宅や職場に警察官が訪ねて来た場合にも心強いサポートが受けることができるでしょう。

逮捕されると、最長72時間は弁護士以外との連絡や面会が制限されます。その間であっても、弁護士であれば自由に接見を行い、適切な助言を与えるなどの弁護活動を行えます。特に、身柄を拘束される前に弁護士に連絡をすることで、即座に弁護士が対応し、その場での逮捕や、無用な家宅捜索や身柄拘束を回避できる可能性がでてきます。まずは包み隠さず弁護士に話をして、現状、どのようにすべきか改めて考えることをおすすめします。

4、まとめ

痴漢行為をしてしまった後、現場から逃げてしまい、後日逮捕されてしまうかもしれない……とおびえているのであれば、まずは弁護士に相談することをおすすめします。万が一の際に備えたアドバイスを受けたり、示談交渉をしたりするなど、心強いサポートを受けることができるでしょう。

ベリーベスト法律事務所 北九州オフィスでも相談を承っております。自分ひとりで悩まずに、まずはお気軽にご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています