オークション詐欺で問われる罪と罰則とは? 具体例を交えて解説

2023年02月13日
  • 財産事件
  • オークション詐欺
オークション詐欺で問われる罪と罰則とは? 具体例を交えて解説

オークション・フリマアプリなど、さまざまなサービスが普及したことで、オークションを利用する一般の方が増えています。インターネットさえ利用できれば簡単に売買できる手軽さも含め、適切に利用すれば、売りたい側にとっても買いたい側にとっても、非常に有益なサービスでしょう。

一方で、匿名性が高いことなどを利用し、商品を偽る、振り込みだけさせて商品を送らないなどの犯罪行為も横行しています。北九州市では、ホームページ上で『若い人に多い相談』としてオークション詐欺を掲げて注意を喚起しています。

ネット被害のなかでも認知度が高いため、被害者が警察に相談・通報するケースも少なくありません。お小遣い稼ぎなどと軽い気持ちで始めたことが、逮捕・刑罰という重い結果に至る可能性があることを十分に認識する必要あります。

本コラムでは「オークション詐欺」に適用される罪や罰則、具体例や逮捕後の流れについて、北九州オフィスの弁護士が解説します。

1、オークション詐欺とは?

「オークション詐欺」とは、一般的にはインターネットオークションを悪用した詐欺行為のこととして理解されています。

代金をだまし取る目的で商品を掲載するケースや、実際に商品は送るものの、商品説明・画像とは異なる廉価な別の商品を発送する手口などが、オークション詐欺の典型例といえます。

一方で、悪意はなかったものの、オークション詐欺だと疑われてしまうケースもあります。
オークション落札者の多くが、代金を支払ったが商品が届かない、実際に届いた商品が代金に見合わない商品だったなどのトラブルに直面すると「オークション詐欺だ」と困惑します。
ところが、実際には出品者側に不測のトラブルや勘違いが起きている場合も少なくないのです。
たとえば、出品者が商品を出品した後に急病で入院してしまい長期にわたって対応できない状態になった場合は、落札者が商品代金を支払っても音信不通であるため、オークション詐欺を疑われる事態となります。
また、ネットオークションを副業としているユーザーであれば、大量の商品を出品していたため誤って別の商品を発送してしまったというケースも考えられるでしょう。

ネットオークションで出品する機会が多いユーザーは、不測の事態やミスによってオークション詐欺を疑われてしまう危険があることを十分に認識して利用しなければなりません。

2、オークション詐欺の具体例

では、実際にオークション詐欺にあたるのは、どのようなケースなのでしょうか。具体的な事例を挙げていきましょう。

  1. (1)代金支払いを受けても商品を発送しなかった事例

    代金の支払いを受けても商品を発送しない手口は、オークション詐欺の典型例です。

    代金支払い後に音信不通となるケースのほか、代金支払いを受けたうえで落札者に「盗まれたので商品を発送できない」などと連絡して代金をだまし取った事例も存在しています。

    また、オークションで落札できなかった次点の入札者を狙い「落札者がキャンセルしたので購入しないか?」と持ちかける手法もあります。
    この手法は「次点詐欺」とも呼ばれています。

  2. (2)ブランド品の模造品を販売した事例

    出品情報を偽って、ブランド品や有名メーカー製品の模造品を販売するという手法も横行しています。実際に、有名メーカーに似た商標を付けたゴルフクラブを出品・販売したとの疑いで逮捕されたという事件も発生しています。

    高級ブランドや有名メーカーは各社が模造品対策に取り組んでおり、公式サイトで注意喚起したり、サイト内で真正品と模造品の判別方法を紹介していたりします。写真の時点ではごまかすことができたとしても、実物をみれば一般ユーザーが相手でも模造品であることを看破される可能性は高いでしょう。

3、オークション詐欺に適用される罪名と罰則

オークション詐欺にあたる行為には、どのような刑罰が適用されるのでしょうか。

  1. (1)詐欺罪

    虚偽の出品情報を掲載して商品代金をだまし取る行為は、刑法第246条の「詐欺罪」にあたります。

    詐欺罪が成立するのは、次の客観的要件及び主観的要件を満たす場合です。

    【客観的要件として以下の4点】
    • 欺罔(ぎもう):虚偽の内容で相手をだます行為です。
      オークション詐欺では、落札すればあたかもその商品が入手できるかのように虚偽情報の出品をする行為や、偽物を正規品として偽り出品する行為などが欺罔にあたります。
    • 錯誤:欺罔によって被害者がだまされた状態です。
      オークション詐欺では、代金を支払えば商品が手に入る、あるいは出品されている商品が真正品であると信じている状態が該当するでしょう。
    • 財物の処分行為:被害者が錯誤によって自らの意思で財産上の利益を交付することをいい、代金の支払いがこれにあたります。
    • 財物・利益の移転:被害者が錯誤によって交付した財産上の利益が加害者に移転することです。
      ネットオークションでは代金を先払いするのが一般的なので、指定口座等への振り込みをもって財物の移転があったと考えます。
    【主観的要件として以下の点】
    • 詐欺の故意
      加害者が、自身のだます行為により被害者がだまされて交付した財産上の利益を得た、ということをわかっている場合には、詐欺の故意があったとされます。
    • 不法領得の意思
      権利者である被害者を排除して、被害者という他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従いこれを利用し又は処分する意思のことです。
      つまり、被害者の金銭を自己の物として、その通貨としての用法に従って支払い等に使用する意思があれば、不法領得の意思があると考えます。


    なお、欺罔・錯誤・処分行為があった場合でも、最終的に財物が移転していなければ「財物を交付させた」(刑法246条1項)とはいえないので、未遂となります。ただし、詐欺罪は刑法第250条の規定によって未遂も罰せられるため、財物が移転していないからといって罪を逃れられるわけではありません

  2. (2)商標法違反

    ブランド品やメーカー品の模造品をオークションで販売する行為は「商標法」に違反するおそれがあります。

    商標法第37条は、類似商品や類似する商標を付した商品の譲渡などを禁止しており、違反すると同法第78条の2の規定に従って、5年以下の懲役もしくは500万円の罰金、またはこれらが併科されます。

    商標法違反を含めた知的財産侵害については、捜査機関も監視を強めているようです。
    品薄となっているはずの人気スニーカーが大量に出品されていることを不審に感じた警察官が自ら落札・鑑定して模造品であることが発覚、検挙に至った事例もあるので、模造品の販売は極めて危険な行為だといえるでしょう。

4、オークション詐欺で逮捕されるとどうなる? 逮捕後の流れ

オークション詐欺は、加害者が自身のパソコン・スマートフォンなどを使って犯行におよんでいるケースが大半です。つまり証拠隠滅が容易にできてしまうため、捜査機関が逮捕に踏み切る可能性が非常に高い犯罪だといえます。
オークション詐欺の容疑で警察に逮捕されると、その後はどのような刑事手続を受けることになるのでしょうか。

  1. (1)逮捕から起訴までの流れ

    警察に逮捕されると、警察署の留置場に身柄を置かれたうえで取調官による取調べを受けます。
    逮捕から48時間以内に、検察官へ送致するかが判断されます。送致されると、検察官による取調べを受けて、24時間以内に釈放または身体拘束の継続のための勾留請求の有無の判断がなされます。
    合計すると72時間を限度に逮捕による身柄拘束を受けることになり、この間で勾留請求の有無が判断されることになります。

    しかし、オークション詐欺のように複雑な事件の全容をわずか72時間で明らかにするのはほぼ不可能でしょう。
    このようなケースでは、裁判官に対して身柄拘束の延長を求めて勾留を請求します。
    裁判官が勾留を認めると、原則10日間以内、延長請求によってさらに10日間以内、合計20日間を限度に身柄拘束が延長されます
    これが勾留による身柄拘束で、逮捕から数えると最長で23日間は社会から隔離されるため、会社・学校といった社会生活への影響は避けられないでしょう。

    勾留が満期を迎える日までに検察官が起訴すると、被疑者だった立場が被告人へと変わり、刑事裁判を待つ身となります。数回の刑事裁判を経て判決が言い渡され、判決確定後に刑罰が執行されます。

  2. (2)余罪で再逮捕される可能性も高い

    オークション詐欺事件では、余罪が多数になるケースもめずらしくありません。
    一度、簡単に大金が手に入ってしまうと、危険な行為だという認識があっても犯行を繰り返してしまう場合が少なくないようです。

    余罪が多数ある事件では、まず複数の犯行のなかから1件の事実だけを取り上げて第一事件として逮捕し、残りの事実を余罪事件として再逮捕するという流れが取られます。
    たとえば、第一事件の勾留が満期になるタイミングで余罪事件として再逮捕されると、再び逮捕・勾留による身柄拘束を受けるので、起訴までに40日を超える身柄拘束を受けることになります。

    また、余罪多数となれば被害総額も大きくなるので、起訴されれば裁判官の判断が厳しい刑罰を科すものとなる可能性も高まるでしょう。

5、まとめ

ネットオークションはパソコンやスマートフォンといったインターネットに接続できる端末さえあれば誰でも簡単に利用できます。
言い換えれば、オークション詐欺は「誰もが手を染めることができる犯罪」でもありますが、警察に発覚すれば逮捕されるおそれは高いでしょう。余罪が多数なら再逮捕によって長期の身柄拘束を受ける事態も十分に予想されるため、対応策を講じなければなりません。

オークション詐欺にあたる行為をはたらいてしまった場合は、刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所 北九州オフィスにご相談ください。被害者との示談交渉や捜査機関へのはたらきかけによって、逮捕の回避や刑罰の軽減を目指したサポートを提供します。

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