他人事にできない!よくある遺産相続トラブルについて北九州オフィスの弁護士が解説
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2018年4月 北九州市では、高齢者に向けて「終活フェスタ」が開催され、イベントでは弁護士や税理士などの専門家に遺産相続や不動産管理について誰もが気軽に相談できるブースが設けられました。
遺産相続のトラブルは、お金持ちの家庭だけで発生するトラブルだと思っている方は少なくありません。しかし、実際には相続財産が高額でない一般的な家庭でも遺産相続に関するトラブルは多く発生しています。
そこで今回は、よくあるトラブルの実例と遺産相続のトラブルが起こらないようにする対策について紹介します。
1、よくある遺産相続トラブル事例
以下では、よくある身近な遺産相続トラブル事例をご紹介します。
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(1)不動産の相続
存在する財産のうち、一番価値的に高いものが「家・土地」というのはよくあるケースです。簡単に分けることができない資産のため、トラブルになりがちです。中でも、その土地や建物に兄弟や姉妹が住んでいる場合は、多くの場合でトラブルになります。
すでにそこに住んでいる兄弟(姉妹)はそこに住み続けたい。しかし他の兄弟(姉妹)としては、家から出てもらい、自分たちが住む、もしくは売却して財産を分割したい。というような話になる場合があります。
不動産という特性上、土地のままでは分割が困難という場合が多く、それだけに話し合いが難しくなります。 -
(2)一人が被相続人の介護を担っていた(寄与分)
親の介護やお世話を兄弟の誰よりも頑張って看てきたので、相続する財産に関して特別に考慮してほしいと考える方は多くいらっしゃると思います。
こういったケースでは、「寄与分」により相続分を増やすことが可能です。
寄与分が認められる者は、「共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者」(第904条の2第1項)と定められています。
寄与分は、誰にでも認められるものではなく、共同相続人のみに認められるものです。そのため、被相続人と生前仲の良かった友人や、介護をしてくれていた職業介護人などには認められません。
また、寄与分を受け取るためには、自分で主張する必要があります。しかし、寄与分の主張をすると他の相続人がなかなか認めてくれず、トラブルに発展するケースは少なくありません。 -
(3)家督相続を主張される
家督相続とは、原則として長男が家督相続人となり、財産の全てを継承する制度です。現在は、民法改正によって、相続において家督相続を主張することはできません。しかし、家のルールや長男の考えで、「家長なのだから遺産を多くもらって当然」と思っている人も少なくありません。中には、家長がそれ以外の相続人に「相続放棄しろ」と強要してくるケースもあります。
当然、そのようなケースでは相続人間のトラブルに発展する可能性が高いです。 -
(4)遺言書の内容に偏りがある
被相続人が公的に有効な遺言書を残している場合、その遺言書をベースに遺産相続が行われます。しかし、「愛人に全ての財産を相続させる」「兄弟のうちの一人にのみ財産を相続させる」などといった、偏った内容の遺言書が発見されると、他の被相続人は到底納得がいかず、トラブルへと発展します。
そこで、民法では兄弟姉妹以外の相続人が、最低限受け取れる財産として遺留分を定めています。遺留分は、遺言書の影響を受けることはありません。
しかし、「遺留分の遺産割合では納得できない」「遺言書通りにすべきである」のように相続人の意見にばらつきがある場合には、なかなか話し合いが上手くまとまらずにトラブルとなるケースも少なくありません。 -
(5)遺産がマイナス財産だった
財産というとお金や価値のあるものを想像しますが、借金も財産のうちのひとつです。被相続人の遺産を整理していったら、最終的にマイナスだったという場合、それを相続人が遺産分割割合通りに相続しなければなりません。
このような場合、相続人は期限内に相続放棄をすることで借金から逃れることができます。しかし連帯保証人になってしまっている場合は別です。
たとえば、被相続人の子どもが3人いたとします。被相続人の配偶者がなくなっている場合、遺産は子どもそれぞれに、3分の1ずつ分けられます。これは借金でも同じです。しかし長男が被相続人の連帯保証人になっている場合、それ以外の2名が相続放棄をしてしまいますと、借金返済義務がすべて長男に渡ってしまうのです。借金の話だけに、これは大揉めとなります。
2、遺産相続トラブル予防法
一度トラブルになってしまうと、親族間の関係性にヒビが入ってしまいます。そうならないための予防法をご説明します。
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(1)遺言書を用意する
トラブル事例でお話をさせていただきました通り、遺言書で相続に関する希望を記したとしても、必ずその通りになるわけではありません。兄弟姉妹以外の相続人は遺留分を請求することもできますし、相続人間で話し合いを行い合意すれば。必ずしも被相続人の希望通りにはなりません。
しかし、遺産相続では、法定相続よりも遺言による相続が優先されますので、相続人同士が不仲であったり、関係が複雑な場合など、あらゆるケースにおいて遺言書の存在がトラブルを防いでくれます。「うちには遺言書は必要ないから」と思わず、あらかじめ遺言書を作成しておくと良いでしょう。
ただ、気をつけておきたい点として、公的に有効な遺言書を残さなければならないということです。また、残された家族が揉めないように、遺留分なども配慮しながら、遺産配分の希望を書き記す配慮も必要でしょう。状況によっては、相続人全員に事前に遺言書の内容を話しておく方が良いこともあります。遺言書の作成の仕方については、弁護士がアドバイスすることも可能ですので、迷われた際には一度相談することをおすすめいたします。 -
(2)「揉めそう」の段階で弁護士に相談!
不動産のように分割が困難な遺産があったり、遺産分割割合に不満がある相続人がいるのにも関わらず、「家族同士だから話し合えば大丈夫」と話し合いを続けていくと、いつしか言い争いになり、争族に発展していってしまいます。スムーズに相続が進まなそうだと感じた段階で、弁護士にご相談ください。
特に遺産相続トラブルに発展してしまいますと、親族関係など、その後の人生にも影響を及ぼしかねませんし、精神的にも疲弊していってしまいます。自分の親族であれば、どのような揉めごとが発生する可能性があるのか事例を参考に想定して、実際に相続となる前に、弁護士に聞いてみるというのが理想的です。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています